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マントル細胞リンパ腫の検査と診断

  1. I.リンパ腫はどのように診断するのですか?

    リンパ腫だけでなく、がんをはじめとする病気が疑われる場合は、まず問診や触診、血液検査を行います。問診・触診ではリンパ節の腫れ、かたさなどを確認し1,2)、血液検査では血液細胞の数や臓器の機能などを調べます2)

  2. II.マントル細胞リンパ腫はどのように診断するのですか?

    問診や触診、血液検査の結果からリンパ腫が疑われる場合、リンパ節の一部を切り取って(リンパ節生検)「病理検査」や「染色体検査」、「細胞表面マーカー検査」などを行います。リンパ節の腫れやしこりの原因を詳しく調べることで、マントル細胞リンパ腫の確定診断を行います1,2)
    マントル細胞リンパ腫では、染色体検査で11番目と14番目の染色体に異常がみられることや、細胞表面マーカー検査では細胞の表面にCD5という抗原(マーカー)がみられることが特徴として知られています3,4)。ほかにも、約9割のマントル細胞リンパ腫の患者さんで細胞の成長サイクルを進めるタンパク質Cyclinサイクリン D1ディーワンが増加していることがわかっています2-4)

  3. III.治療方針はどのように決定するのですか?

    確定診断後、レントゲンやCTなどの「画像検査」、「骨髄検査(骨髄穿刺・骨髄生検)」などによって、がんのタイプ(病型)や病気の広がり(病期)を確認します。また、それらの結果から患者さんの病気がどのような経過をたどるか、医学的な予測(予後)を行い、患者さんそれぞれに適した治療方針を検討します。

問診・触診

いつ頃からリンパ節が腫れているのか、痛みや倦怠感などの全身症状の有無を確認します。特定の地域によるウイルス感染が原因であることも考えられるため、出生地を聞かれることもあります。
腫れの形やかたさ、場所、痛みがあるかどうか、などを触診します1,2)
年齢や全身状態も治療選択の要素となります3,4)

血液検査

血液細胞の数、肝機能、腎機能、ウイルス感染の有無、血液中のがん細胞の有無、C反応性タンパク(CRP)やアルブミンなどの数値を調べます2)
また、マントル細胞リンパ腫では治療の経過を予測するため、白血球や血清LDHなどの数値を確認します3,4)

リンパ節生検

リンパ節の腫れの原因を調べるため、鎖骨の上や首(頸部)、わきの下、足の付け根の上あたり(鼠径部)など、なるべく患者さんの負担が少ない部位を選び、リンパ節を丸ごと、もしくは一部を採取します2,5)。採取したリンパ節は病理検査、細胞表面マーカー検査、染色体検査、遺伝子検査などに用います2)
マントル細胞リンパ腫では、染色体検査で11番染色体q13と14番染色体q32に異常がみられることや、細胞表面マーカー検査で細胞の表面にCD5という抗原(マーカー)がみられることが知られています3,4)
マントル細胞リンパ腫と同じくCD5陽性となる慢性リンパ性白血病ではCD23というマーカーが発現するのに対し、マントル細胞リンパ腫ではCD23は発現しません3)
また、マントル細胞リンパ腫では細胞の成長サイクルを進めるタンパク質Cyclin D1の発現やSOX11という遺伝子の異常がみられることがわかっています2-4)

画像検査

リンパ節の病変の広がり(病期)を調べるために、レントゲン、CT、MRI、PET-CT(FDG-PET)などの画像検査を行います1,2)
FDG-PET検査はがん細胞がブドウ糖を多く取り込む性質を利用した検査で、放射性元素がついたブドウ糖類似物質を投与することで、がん細胞が集まっている場所を調べるものです1,2)
マントル細胞リンパ腫では、消化管に多発ポリープ病変を生じることがあるため3)、内視鏡検査や消化管造影で病変の有無などを確認することもあります。

骨髄検査

がん化したリンパ球が骨髄へ入り込んでいないか(骨髄浸潤)を確認するため、骨髄の検査を行うことがあります3)
骨髄穿刺では主に腸骨や胸骨、骨髄生検では腸骨から採取します2)

マントル細胞リンパ腫はいつ治療を開始しますか?

マントル細胞リンパ腫では、患者さんのリンパ節の病変の大きさ(腫瘍量しゅようりょう)、広がり、症状などの病期に基づいて治療開始のタイミングを検討します。
病期I・II期の限局期の患者さんでは、放射線単独療法、または放射線療法に化学療法を加えた併用療法を行うことが推奨されています4)。これらの治療を行う場合は、PET/CTや内視鏡検査で限局期であることを慎重に判断する必要があります4)
病期III・IV期の進行期であっても、一部の患者さんではゆっくりと病気が進行する場合があります。その場合はすぐに治療を始めずそのまま様子をみることがあります(「治療ちりょう経過観察けいかかんさつ」といいます)4)。しかし、マントル細胞リンパ腫の診断時にこのような症例をみつけることは難しいため4)、さまざまな検査を行って治療を開始する必要があるか慎重に判断されます。

予後とは何ですか?

病気がどのような経過をたどるかという見通しのことを「予後よご」といいます。「予後がよい」といえば「これから病気がよくなる可能性が高い」ということになります6)。また、予後という言葉を「生存期間(どれくらい生きられるか)」に限定して使用されることもあります7)
マントル細胞リンパ腫の患者さんでは「年齢」、「全身状態」、「血清LDH」、「白血球数」や、「血液中のアルブミン」、「骨髄浸潤の有無」、「遺伝子の異常」が予後を予測する上で特に重要な要素とされ4)、これらの予後に影響を与える要素(因子)を「予後因子よごいんし」と言います。

治療や生活について心配なことがある場合、どうすればよいですか?

がんの診断を受けることは衝撃的なことで、不安でいっぱいだと思います。マントル細胞リンパ腫は現在多くの臨床試験が⾏われ、新しい治療法が検討されています4)
がん患者さんとご家族はさまざまなサポートを受けることができますので、わからないこと‧詳しく知りたいことがあれば担当医や看護師さんに相談してください。

[参考文献]

  1. 1)木崎昌弘(監修)、血液のがん 悪性リンパ腫・白血病・多発性骨髄腫、主婦の友社、2020、PP27-64
  2. 2)医療情報科学研究所、病気がみえる vol.5 血液 第3版、メディックメディア、2023、PP14-33、192-197、202-207
  3. 3)日本血液学会(編集)、血液専門医テキスト 改訂第4版、南江堂、2023、PP316-319
  4. 4)日本血液学会(編集)、造血器腫瘍診療ガイドライン 第3.1版(2024年版)―悪性リンパ腫 総論
    http://www.jshem.or.jp/gui-hemali/2_soron.html(別ウィンドウで開く))、
    マントル細胞リンパ腫(http://www.jshem.or.jp/gui-hemali/2_4.html(別ウィンドウで開く))(2025年2月4日利用)
  5. 5)国立がん研究センターがん情報サービス.がんに関する用語集―リンパ節生検.
    https://ganjoho.jp/public/qa_links/dictionary/dic01/modal/lymph_setsuseiken.html(別ウィンドウで開く))(2025年2月4日利用)
  6. 6)伊豆津宏二(監修)、血液のがんがわかる本 リンパ腫・白血病・多発性骨髄腫、講談社、2023、PP9-30
  7. 7)国立国語研究所.「病院の言葉」を分かりやすくする提案―予後
    https://www2.ninjal.ac.jp/byoin/teian/ruikeibetu/teiango/teiango-ruikei-a/yogo.html(別ウィンドウで開く))(2025年2月4日利用)

2025年3月掲載
JP-VEN-240030-2.0