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マントル細胞リンパ腫とは

マントル細胞リンパ腫とはどのような病気ですか?

リンパ腫とは、⽩⾎球の⼀種であるリンパ球ががん細胞となって増殖する病気で、がん化したリンパ球の種類や成⻑段階などをもとに分類されます1-3)
「マントル細胞リンパ腫」は英語で「Mantle Cell Lymphoma」と表記されるため、「MCL(エムシーエル)」という略称で呼ばれることもあります。
「マントル細胞リンパ腫」は、身体全体にある免疫器官の1つであるリンパ節4)の「マントル層」を構成するB細胞に異常が起こり、増殖していく血液がんで1,5,6)、非ホジキンリンパ腫の中のB細胞リンパ腫に分類されます。
マントル細胞リンパ腫の割合は、国内で診断されるリンパ腫の約3%といわれています6)。国内におけるリンパ腫の年間の新規発症者数は約36,000人であり7)、そのうちマントル細胞リンパ腫は1,000~1,100人ほどと考えられます。また、60歳以上の高齢男性に多くみられます5,6)

リンパ節の構造 マントル層
ヒトの身体にはリンパ節という免疫器官があります。リンパ節の中にB細胞が集まり、成長するリンパ濾胞という場所があります。リンパ濾胞は胚中心、マントル層、辺縁帯という3層で構成されています。

日本血液学会(編集)、造血器腫瘍診療ガイドライン 第3.1版(2024年版)―マントル細胞リンパ腫
http://www.jshem.or.jp/gui-hemali/2_4.html(別ウィンドウで開く))(2025年2月4日利用)
伊豆津宏二(監修)、血液のがんがわかる本 リンパ腫・白血病・多発性骨髄腫、講談社、2023、PP31-52
鈴木隆浩、他(編集)、専門医のための血液病学、医学書院、2022、PP209-212より作図

memoリンパ節の中には、B細胞が集積する「リンパ濾胞」があります。
リンパ濾胞は、胚中心、マントル層、辺縁帯の3層から構成されています。
マントル細胞リンパ腫は、「マントル層」という部分で異常なB細胞が増殖していきます1,6,8)

マントル細胞リンパ腫は進行のゆるやかな病型(がんのタイプ)も含まれることから、ゆっくりと年単位で進行する「インドレントリンパ腫(低悪性度)」に分類されます6,9)。しかし、週~月単位の比較的早い速度で症状が進行する「アグレッシブリンパ腫(中悪性)」と同様の経過を示す病型も認められています5-7,10)
また、マントル細胞リンパ腫の初回診断時には、約9割の患者さんはがんがある程度進行している「進行期」だといわれています6)

memoリンパ腫の中でも、病気が進行するスピード(悪性度の高さ)がゆっくりなリンパ腫を、「インドレントリンパ腫(低悪性度)」といいます6)
月単位や週単位で進行するスピードの速いリンパ腫を、「アグレッシブリンパ腫(中悪性度)」、「高度アグレッシブリンパ腫(高悪性度)」といいます6)

マントル細胞リンパ腫ではどのような症状があらわれますか?

リンパ腫では、がん化したリンパ球がリンパ管を通じて全身を巡るため、首やわきの下、太ももの付け根の上あたり(鼠径部そけいぶ)などのリンパ節でがん細胞が増殖し、リンパ節が腫れたり(腫脹しゅちょう)、しこり・こぶ(腫瘤しゅりゅう)をつくったりします2)

memo リンパ節の大きさや数が増加した状態のことを「リンパ節腫脹」といいます。リンパ節腫脹はリンパ腫だけでなく、ウイルスなどの感染症などでもみられ、直径1.5cm超のものが腫大リンパ節と定義されてます11)。リンパ腫の場合、かたさは柔~硬で弾性があり、圧痛はないものが多いとされています9)

マントル細胞リンパ腫は、多くの場合リンパ節に腫脹や腫瘤が生じますが、骨髄(患者さんの半数以上)や脾臓、消化管(いずれも患者さんの約30%)に「病変びょうへん(病気による異常・変化)」が生じることがあります6)。リンパ節内の病変を「節性病変せつせいびょうへん」、リンパ節外の臓器の病変を「節外病変せつがいびょうへん」と呼びます5,6)
痛みなどの症状がみられないことも多く9)、健康診断での腹部超音波検査やCTなどで偶然リンパの腫れを指摘され、血液内科などの専門医へ紹介される患者さんもいます。
マントル細胞リンパ腫が進行すると、ひどい寝汗(盗汗とうかん)、発熱、急激な体重減少、全身倦怠感などの症状が出ることがあります6,9)。また、腫れやしこりが大きくなることで、尿の通路(尿管)や静脈、脊髄などの臓器が圧迫されて、尿が出にくくなったり、むくみや麻痺を生じたりします2,9,10)。身体のかゆみや皮膚の発疹があらわれることもあります9)

病気が進行したときのマントル細胞リンパ腫の主な症状

  • 発熱(38℃以上の熱が続き、他の原因がないもの)
  • 体重減少(ダイエットをしていないのに半年間で10%以上の減少)
  • ひどい寝汗(盗汗)(一晩にシーツや掛け布団を取り替えなくてはならないくらいの大量の寝汗)
  • 全身の倦怠感
  • 食欲不振
  • むくみ、腹水、胸水

木崎昌弘(監修)、血液のがん 悪性リンパ腫・白血病・多発性骨髄腫、主婦の友社、2020、PP27-64
国立がん研究センター がん情報サービス. MALTリンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫など
https://ganjoho.jp/public/cancer/B_lymphoma/index.html(別ウィンドウで開く))(2025年2月4日利用)より作表

memoリンパ腫における、発熱、体重減少、ひどい寝汗(盗汗)の症状を「B症状」といいます。

病期とは何ですか?

リンパ腫の場所や広がり、進行の程度、症状、全身の状態などを踏まえて、がんの状態を示す指標を「病期」といいます6,12)。リンパ腫は病気(病変びょうへんの広がり方によって4つの病期(Ⅰ期~Ⅳ期)に分けられます。リンパ節の腫れやしこり(=病変)が限られた範囲にとどまっている状態のI期とⅡ期を「限局期」、より広い範囲に病変が広がっている状態のⅢ期とⅣ期を「進行期」といいます。
病期は、診察や画像検査(レントゲン、CT、MRI、FDG-PETなど)、骨髄穿刺・骨髄生検など複数の検査によって決定します。決定した病期にもとづいて治療方針を検討します6)

病期分類
リンパ腫では病気の広がり方によって4つの病期に分けられます。病気の広がりが限られた範囲の場合は限局期といい、Ⅰ期とⅡ期が該当します。Ⅰ期はリンパ節の病変が1ヵ所のリンパ節だけにある、またはリンパ節外の病変が1ヵ所だけにある場合です。Ⅱ期は横隔膜の上または下側のどちらか一方に、リンパ節の病変が2ヵ所以上ある状態です。  病気がより広い範囲に広がっている状態を進行期といい、Ⅲ期とⅣ期が該当します。Ⅲ期は横隔膜の上下両方のリンパ節の病変が2ヵ所以上ある状態です。Ⅳ期はリンパ節だけでなく、リンパ節以外の臓器、皮膚、骨髄、血液中などに病気が広がっている状態です。

木崎昌弘(監修)、血液のがん 悪性リンパ腫・白血病・多発性骨髄腫、主婦の友社、2020、PP27-64
⽇本⾎液学会(編集)、造⾎器腫瘍診療ガイドライン 第3.1版(2024年版)―悪性リンパ腫 総論
http://www.jshem.or.jp/gui-hemali/2_soron.html(別ウィンドウで開く))、
マントル細胞リンパ腫(http://www.jshem.or.jp/gui-hemali/2_4.html(別ウィンドウで開く))(2025年2月4日利用)より作図

[参考文献]

  1. 1)伊⾖津宏⼆(監修)、⾎液のがんがわかる本 リンパ腫‧⽩⾎病‧多発性⾻髄腫、講談社、2023、PP9-30
  2. 2)⽊崎昌弘(監修)、⾎液のがん 悪性リンパ腫‧⽩⾎病‧多発性⾻髄腫、主婦の友社、2020、PP22-64
  3. 3)神⽥善伸(監修)、ウルトラ図解 ⾎液がん、法研、2020、PP11-44
  4. 4)国⽴がん研究センター がん情報サービス.がんに関する用語集―リンパ節
    https://ganjoho.jp/public/qa_links/dictionary/dic01/modal/lymph_setsu.html(別ウィンドウで開く))(2025年2月4日利用)
  5. 5)⽇本⾎液学会(編集)、⾎液専⾨医テキスト 改訂第4版、南江堂、2023、PP316-319
  6. 6)⽇本⾎液学会(編集)、造⾎器腫瘍診療ガイドライン 第3.1版(2024年版)―悪性リンパ腫 総論
    http://www.jshem.or.jp/gui-hemali/2_soron.html(別ウィンドウで開く))、
    マントル細胞リンパ腫(http://www.jshem.or.jp/gui-hemali/2_4.html(別ウィンドウで開く))(2025年2月4日利用)
  7. 7)国⽴がん研究センター がん情報サービス. がん種別統計情報 悪性リンパ腫
    https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/25_ml.html(別ウィンドウで開く))(2025年2月4日利用)
  8. 8)鈴⽊隆浩、他(編集)、専⾨医のための⾎液病学、医学書院、2022、PP209-212
  9. 9)国⽴がん研究センター がん情報サービス. MALT リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫など
    https://ganjoho.jp/public/cancer/B_lymphoma/index.html(別ウィンドウで開く))(2025年2月4日利用)
  10. 10)医療情報科学研究所、病気がみえる vol.5 ⾎液 第3版、メディックメディア、2023、PP2-13、192-197、202-207
  11. 11)⽇本⾎液学会、他(編集)、造⾎器腫瘍取扱い規約 2010年3⽉ 第1版、⾦原出版、2010、PP141-149
  12. 12)国⽴がん研究センターがん情報サービス. がんの病期のことを知る
    https://ganjoho.jp/public/dia_tre/dia_tre_diagnosis/stage.html(別ウィンドウで開く))(2025年2月4日利用)

2025年3月掲載
JP-VEN-240030-2.0