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濾胞性ろほうせいリンパ腫の検査と診断

  1. I.リンパ腫はどのように診断するのですか?

    リンパ腫だけでなく、がんをはじめとする病気が疑われる場合は、まず問診や触診、血液検査を行います。問診・触診ではリンパ節の腫れ、かたさなどを確認し1-3)、血液検査では血液細胞の数や臓器の機能などを調べます3)

  2. II.濾胞性リンパ腫はどのように診断するのですか?

    問診や触診、血液検査の結果から悪性リンパ腫が疑われる場合、リンパ節の一部を切り取って(リンパ節生検)「病理検査」や「染色体検査」、「細胞表面マーカー検査」などを行います。リンパ節の腫れやしこりの原因を詳しく調べることで、濾胞性リンパ腫の確定診断を行います1-3)
    濾胞性リンパ腫では、染色体検査で14番目と18番目の染色体に異常がみられることや、細胞表面マーカー検査では細胞の表面にCD10、CD20という抗原(マーカー)がみられることが特徴として知られています3,4)

  3. III.治療方針はどのように決定するのですか?

    確定診断後、レントゲンやCTなどの「画像検査」、「骨髄検査(骨髄穿刺・骨髄生検)」などによって、がんのタイプ(病型)や病気の広がり(病期)を確認し、治療方針を検討します。

問診・触診

いつ頃からリンパ節が腫れているのか、痛みや倦怠感などの全身症状の有無を確認します。特定の地域によるウイルス感染が原因であることも考えられるため、出生地を聞かれることもあります。
腫れの形やかたさ、場所、痛みがあるかどうかなどを触診します1,3)

血液検査

血液細胞の数、肝機能、腎機能、ウイルス感染の有無、血液中のがん細胞の有無、C反応性タンパク(CRP)やアルブミンなどの数値を調べます3)
濾胞性リンパ腫の診断後、治療方針を決定するためにβ2ミクログロブリンというタンパクの値を調べることがあります。

リンパ節生検

リンパ節の腫れの原因を調べるため、鎖骨の上や首(頸部)、わきの下、足の付け根の上あたり(鼠径部)など、なるべく患者さんの負担が少ない部位を選び、リンパ節を丸ごと、もしくは一部を採取します3,5)。採取したリンパ節は病理検査、細胞表面マーカー検査、染色体検査、遺伝子検査などに用います3)
濾胞性リンパ腫では、染色体検査で14番染色体q32と18番染色体q21に異常がみられることや、細胞表面マーカー検査ではCD10やCD20、BCL-2などの抗原(マーカー)がみられることが知られています3,4)

画像検査

リンパ節の病変の広がり(病期)を調べるために、レントゲン、CT、MRI、PET-CT(FDG-PET)などの画像検査を行います1-3)
FDG-PET検査はがん細胞がブドウ糖を多く取り込む性質を利用した検査で、放射性元素がついたブドウ糖類似物質を投与することで、がん細胞が集まっている場所を調べるものです1,3)

骨髄検査

がん化したリンパ球が骨髄へ入り込んでいないか(骨髄浸潤)を確認するため、骨髄の検査を行うことがあります4)
骨髄穿刺では骨髄に針を刺し、骨髄液を吸引します。骨髄生検では、やや太い針で骨髄組織の一部を採取します3)

濾胞性リンパ腫はいつ治療を開始しますか?

濾胞性リンパ腫は、一般的にゆっくりと症状が進行するため、症状がなく、病変が小さい場合は、すぐに治療を始めずそのまま様子をみることがあります(「治療ちりょう経過観察けいかかんさつ」といいます)。リンパ節の病変の大きさ(腫瘍量しゅようりょう)、広がり、症状など、患者さん一人ひとりの全身状態を考慮して、治療を開始するかどうかを検討します6)
病期III・IV期の進行期の患者さんであっても、腫瘍量が少なく、症状のない患者さんでは経過観察となることがあります6)。また、病期I・II期の限局期の患者さんでも、病変が小さい場合には、放射線療法により治療を開始することがあります6)
下記に示したリンパ節病変が大きいと判断される基準をもとに、薬物療法の開始が検討されます。そのため、リンパ節病変の大きさを検査することは治療開始にあたってとても重要です。

リンパ節病変が大きい(高腫瘍量)と判断される基準:GELF基準

  • リンパ節病変がある場所にかかわらず、がん細胞の大きさが最大長径7cm以上の場合
  • 長径3cm以上の腫大リンパ節領域が3つ以上ある場合
  • B症状(発熱、体重減少、ひどい寝汗)がある場合
  • 脾臓ひぞうの大きさが16cm以上で、へその位置より下まで大きくなっている脾腫の場合
  • 胸水や腹水がたまっている場合
  • 尿の通り道(尿管)や眼窩(眼球が入っているくぼみ)、胃腸などの圧迫症状がある場合
  • 白血化(リンパ腫細胞が5,000/μL超)している場合
  • 血球減少(好中球数が1,000/μL未満、血小板数が100,000/μL未満)している場合

血清LDH値、β2ミクログロブリン高値が加えられることがあります

日本血液学会(編集)、血液専門医テキスト 改訂第4版、南江堂、2023、PP307-312
日本血液学会(編集)、造血器腫瘍診療ガイドライン 第3.1版(2024年版)―濾胞性リンパ腫
http://www.jshem.or.jp/gui-hemali/2_1.html(別ウィンドウで開く))(2025年2月4日利用)より作表

memoリンパ節などで発生した初発のリンパ腫が増殖して、初発で発生した場所から末梢血へ流れ出ることを、リンパ腫の「白血化」といいます3)

濾胞性リンパ腫の治療開始基準:BNLI基準

  • B症状(発熱、体重減少、ひどい寝汗)、またはかゆみの症状が強い場合
  • 急激に病勢が進行している場合
  • 血球減少(Hb<10g/dL、白血球<3,000/μL、または血小板<100,000/μL)している場合
  • 病変が広がり、命の危険があると判断された場合
  • 腎臓に病変が広がっている場合
  • 骨に病変がある場合
  • 肝臓に病変が広がっている場合

飛内賢正、他(監修)、悪性リンパ腫治療マニュアル 改訂第5版、南江堂、2020、PP150-153
日本血液学会(編集)、造血器腫瘍診療ガイドライン 第3.1版(2024年版)―濾胞性リンパ腫
http://www.jshem.or.jp/gui-hemali/2_1.html(別ウィンドウで開く))(2025年2月4日利用)より作表

予後とは何ですか?

病気がどのような経過をたどるかという見通しのことを「予後よご」といい、予後に影響を与える要素(因子)を「予後因子よごいんし」といいます7)。また、予後という言葉を「生存期間(どれくらい生きられるか)」に限定して使用されることもあります8)
濾胞性リンパ腫では、年齢や病期、病変の広がり・数(リンパ節病変の領域数)、血液検査の結果(血清LDH、ヘモグロビン値)が予後因子とされています。また、治療薬の開発が進んだ現在ではリンパ節腫脹の大きさや骨髄浸潤の有無、血液中のタンパク質(β2ミクログロブリン値)なども予後因子として検討されています6)
該当する予後因子が少ない方を低リスクといい、予後が良好であることが報告されています9,10)

治療や生活について心配なことがある場合、どうすればよいですか?

がんの診断を受けることは衝撃的なことで、不安でいっぱいだと思います。しかし、濾胞性リンパ腫は新しい治療の開発が進み、年々予後が改善されています4,6)
がん患者さんとご家族はさまざまなサポートを受けることができますので、主治医の先生や看護師さんに相談してください。

[参考文献]

  1. 1)木崎昌弘(監修)、血液のがん 悪性リンパ腫・白血病・多発性骨髄腫、主婦の友社、2020、PP27-64
  2. 2)国立がん研究センターがん情報サービス. 濾胞性リンパ腫
    https://ganjoho.jp/public/cancer/follicular_lymphoma/index.html(別ウィンドウで開く))(2025年2月4日利用)
  3. 3)医療情報科学研究所、病気がみえる vol.5 血液 第3版、メディックメディア、2023、PP192-207
  4. 4)日本血液学会(編集)、血液専門医テキスト 改訂第4版、南江堂、2023、PP307-312
  5. 5)国立がん研究センターがん情報サービス.がんに関する用語集―リンパ節生検
    https://ganjoho.jp/public/qa_links/dictionary/dic01/modal/lymph_setsuseiken.html(別ウィンドウで開く))(2025年2月4日利用)
  6. 6)日本血液学会(編集)、造血器腫瘍診療ガイドライン 第3.1版(2024年版)―濾胞性リンパ腫
    http://www.jshem.or.jp/gui-hemali/2_1.html(別ウィンドウで開く))(2025年2月4日利用)
  7. 7)伊豆津宏二(監修)、血液のがんがわかる本 リンパ腫・白血病・多発性骨髄腫、講談社、2023、PP9-30
  8. 8)国立国語研究所.「病院の言葉」を分かりやすくする提案―予後
    https://www2.ninjal.ac.jp/byoin/teian/ruikeibetu/teiango/teiango-ruikei-a/yogo.html(別ウィンドウで開く))(2025年2月4日利用)
  9. 9)Solal-Céligny P, et al: Blood 104, 5: 1258-1265 (2004)
  10. 10)Federico M, et al: J Clin Oncol 27, 27: 4555-4562 (2009)

2025年3月掲載
JP-VEN-240030-2.0