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濾胞性ろほうせいリンパ腫とは

濾胞性リンパ腫とはどのような病気ですか?

リンパ腫とは、⽩⾎球の⼀種であるリンパ球ががん細胞となって増殖する病気で、がん化したリンパ球の種類や成⻑段階などをもとに分類されます1-3)
「濾胞性リンパ腫」は英語で「Follicular Lymphoma」と表記されるため、「FL(エフエル)」という略称で呼ばれることもあります。
濾胞性リンパ腫は非ホジキンリンパ腫の中のB細胞リンパ腫に分類され、非ホジキンリンパ腫の10~15%であるといわれていますが、近年は増加傾向が認められています4)。20歳以下での発症はまれで、発症年齢中央値は約60歳です4)。また男女比は1:1.7、国内では年間約9,000人が診断されています4,5)

memoリンパ節の中には、B細胞が集積する「リンパ濾胞」があります。
細菌やウイルスなどに出会ったことがないB細胞(ナイーブB細胞)が存在する「一次リンパ濾胞」、成長したB細胞が存在する「二次リンパ濾胞」があります6)
濾胞性リンパ腫は、二次リンパ濾胞にあるB細胞に由来すると考えられています4)

濾胞性リンパ腫はゆっくりと年単位で進行し、自覚症状があらわれにくいのが特徴です4,6)。そのため、初回診断時にはがんがある程度進行している「進行期」の患者さんが約70~80%といわれています7)
多くの場合、薬物療法などの治療によって症状の改善が期待できますが、「再発・再燃」(症状が落ち着いていたがんが再び進行したり、別の場所に出現したりすること)を繰り返します。一部の患者さんでは、週~月単位で進行するタイプのリンパ腫に変化することもあります7)

memoリンパ腫の中でも、病気が進行するスピード(悪性度の高さ)がゆっくりなリンパ腫を、「インドレントリンパ腫(低悪性度)」といいます7)
月単位や週単位で進行するスピードの速いリンパ腫を、「アグレッシブリンパ腫(中悪性度)」、「高度アグレッシブリンパ腫(高悪性度)」といいます7)

濾胞性リンパ腫ではどのような症状があらわれますか?

リンパ腫では、がん化したリンパ球がリンパ管を通じて全身を巡るため、首やわきの下、太ももの付け根の上あたり(鼠径部そけいぶ)などのリンパ節でがん細胞が増殖し、リンパ節が腫れたり(腫脹しゅちょう)、しこり・こぶ(腫瘤しゅりゅう)をつくったりします2)

memo リンパ節の大きさや数が増加した状態のことを「リンパ節腫脹」といいます。リンパ節腫脹はリンパ腫だけでなく、ウイルスなどの感染症などでもみられ、1.5cm以上のもとが腫大リンパ節と定義されてます8)
リンパ腫の場合、かたさは柔~硬で弾性があり、圧痛はないものが多いとされています5)

濾胞性リンパ腫も、多くの場合はリンパ節に腫脹や腫瘤が生じます(節性病変せつせいびょうへん)が、まれに十二指腸などのお腹の中、皮膚などでがん化したリンパ球が増殖することがあります(節外病変せつがいびょうへん4,5)。痛みなどの症状がみられないことも多く5)、健康診断での腹部超音波検査やCTなどで偶然リンパ節の腫れを指摘され、血液内科などの専門医へ紹介される患者さんもいます。
濾胞性リンパ腫が進行すると、ひどい寝汗(盗汗とうかん)、発熱、急激な体重減少、全身倦怠感などの症状が出ることがあります。また、腫れやしこりが大きくなることで、尿の通路(尿管)が圧迫され尿が出にくくなったり、胸や腹部のリンパ腫によって腹水や胸水がたまったりすることがあります2,5,6)

病気が進行したときの濾胞性リンパ腫の主な症状

  • 発熱(38℃以上の熱が続き、他の原因がないもの)
  • 体重減少(ダイエットをしていないのに半年間で10%以上の減少)
  • ひどい寝汗(盗汗)(一晩にシーツや掛け布団を取り替えなくてはならないくらいの大量の寝汗)
  • 全身の倦怠感
  • 食欲不振
  • むくみ(尿が排出されないことによる)、腹水、胸水

木崎昌弘(監修)、血液のがん 悪性リンパ腫・白血病・多発性骨髄腫、主婦の友社、2020、PP27-64
国立がん研究センターがん情報サービス. 濾胞性リンパ腫
https://ganjoho.jp/public/cancer/follicular_lymphoma/index.html(別ウィンドウで開く))(2025年2月4日利用)より作表

memo発熱、体重減少、ひどい寝汗(盗汗)のことを「B症状」といいます。

病期とは何ですか?

リンパ腫の場所や広がり、進行の程度、症状、全身の状態などを踏まえて、がんの状態を示す指標を「病期」といいます7,9)。リンパ腫は病気(病変びょうへんの広がり方によって4つの病期(Ⅰ期~Ⅳ期)に分けられます。リンパ節の腫れやしこり(=病変)が限られた範囲にとどまっている状態のI期とⅡ期を「限局期」、より広い範囲に病変が広がっている状態のⅢ期とⅣ期を「進行期」といいます。
病期は、診察や画像検査(レントゲン、CT、MRI、FDG-PETなど)、骨髄穿刺・骨髄生検など複数の検査によって決定します。決定した病期にもとづいて治療方針を検討します7)

病期分類
リンパ腫では病気の広がり方によって4つの病期に分けられます。病気の広がりが限られた範囲の場合は限局期といい、Ⅰ期とⅡ期が該当します。Ⅰ期はリンパ節の病変が1ヵ所のリンパ節だけにある、またはリンパ節外の病変が1ヵ所だけにある場合です。Ⅱ期は横隔膜の上または下側のどちらか一方に、リンパ節の病変が2ヵ所以上ある状態です。 病気がより広い範囲に広がっている状態を進行期といい、Ⅲ期とⅣ期が該当します。Ⅲ期は横隔膜の上下両方のリンパ節の病変が2ヵ所以上ある状態です。Ⅳ期はリンパ節だけでなく、リンパ節以外の臓器、皮膚、骨髄、血液中などに病気が広がっている状態です。

木崎昌弘(監修)、血液のがん 悪性リンパ腫・白血病・多発性骨髄腫、主婦の友社、2020、PP27-64
国立がん研究センターがん情報サービス. 濾胞性リンパ腫
https://ganjoho.jp/public/cancer/follicular_lymphoma/index.html(別ウィンドウで開く))(2025年2月4日利用)
⽇本⾎液学会(編集)、造⾎器腫瘍診療ガイドライン 第3.1版(2024年版)―悪性リンパ腫 総論
http://www.jshem.or.jp/gui-hemali/2_soron.html(別ウィンドウで開く))、
濾胞性リンパ腫(http://www.jshem.or.jp/gui-hemali/2_1.html(別ウィンドウで開く))(2025年2月4日利用)より作図

[参考文献]

  1. 1)伊⾖津宏⼆(監修)、⾎液のがんがわかる本 リンパ腫‧⽩⾎病‧多発性⾻髄腫、講談社、2023、PP9-30
  2. 2)⽊崎昌弘(監修)、⾎液のがん 悪性リンパ腫‧⽩⾎病‧多発性⾻髄腫、主婦の友社、2020、PP22-64
  3. 3)神⽥善伸(監修)、ウルトラ図解 ⾎液がん、法研、2020、PP11-44
  4. 4)⽇本⾎液学会(編集)、⾎液専⾨医テキスト 改訂第4版、南江堂、2023、PP307-312
  5. 5)国⽴がん研究センターがん情報サービス. 濾胞性リンパ腫
    https://ganjoho.jp/public/cancer/follicular_lymphoma/index.html(別ウィンドウで開く))(2025年2月4日利用)
  6. 6)医療情報科学研究所(編集)、病気がみえる vol.5 血液 第3版、メディックメディア、2023、PP2-13、192-207
  7. 7)⽇本⾎液学会(編集)、造⾎器腫瘍診療ガイドライン 第3.1版(2024年版)―悪性リンパ腫 総論
    http://www.jshem.or.jp/gui-hemali/2_soron.html(別ウィンドウで開く))、
    濾胞性リンパ腫(http://www.jshem.or.jp/gui-hemali/2_1.html(別ウィンドウで開く))(2025年2月4日利用)
  8. 8)⽇本⾎液学会、他(編集)、造⾎器腫瘍取扱い規約 2010年3⽉ 第1版、⾦原出版、2023、PP141-149
  9. 9)国⽴がん研究センターがん情報サービス. がんの病期のことを知る
    https://ganjoho.jp/public/dia_tre/dia_tre_diagnosis/stage.html(別ウィンドウで開く))(2025年2月4日利用)

2025年3月掲載
JP-VEN-240030-2.0