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びまんせい大細胞型だいさいぼうがたB細胞リンパ腫の治療法

限局期(病期Ⅰ/Ⅱ期)のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の患者さんでは
どのような治療が行われますか?

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫を含むがんの治療では、患者さんの状態に最適な治療方法を担当医と一緒に相談しながら決定していきます。
国内のガイドラインでは、病期Ⅰ/Ⅱ期(限局期)のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の初回治療は「がんの大きさ」によって治療方針が検討されます1)
「全身状態」、「年齢」、「血清LDH」など患者さんの状態に応じて、化学療法や分子標的薬による薬物療法を行い、必要に応じて放射線療法を追加します1)。初回の治療でがん細胞がすべて消えた場合には、治療を行わず経過観察(無治療経過観察)をすることがあります1)
しかし、一度症状が改善しても、「再発・再燃」すること(症状が落ち着いていたがんが再び進行したり、別の場所に出現したりすること)があります。治療効果が得られなかった、または再発・再燃した場合、異なる薬物療法(最初の薬物療法を一次治療、次の薬物療法を二次治療といいます)を行います1)

限局期(病期Ⅰ/Ⅱ期)の患者さんに行われる主な治療法

化学療法
(多剤併用化学療法)

殺細胞性のお薬(抗がん剤)はがん細胞の分裂、DNA合成を阻害することで増殖を抑制します2,3)
複数の抗がん剤を組み合わせた治療法を多剤併用化学療法といい、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の一次治療として広く実施されています1)

分子標的薬

がん細胞の増殖に関わるタンパク質や、がんを攻撃する免疫に関わるタンパク質(分子)などを標的にしてがんを攻撃するお薬を分子標的薬といいます4)
なかでも、特定のタンパク質を標的とするお薬を抗体薬といいます2)

抗CD20抗体
(抗体医薬)

がん細胞の表面に出現している抗原分子に作用する分子標的薬のなかで、「CD20」に対して作用するお薬を「抗CD20抗体」といいます。国内のガイドラインにおいて、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の一次治療では抗CD20抗体と化学療法を併用した治療の実施が推奨されています1)

放射線療法

放射線は細胞分裂に必要な遺伝子に作用することでがん細胞が増えないようにしたり、細胞が新しい細胞に置き換わるときに脱落する仕組みを促すことでがん細胞を消滅させたり、少なくしたりします5)
巨大病変のない限局期のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の患者さんでは、化学療法の後に放射線療法を行うことがあります1)

memo

以下の基準を満たしたものを「巨大病変(Bulky massばるきーます)」といいます1)

  • がんの直径が10cmを超える場合
  • 縦隔じゅうかく(左右の肺の間の部分)の3分の1以上に病変が広がっている場合

※:進行期の高齢者では7.5cm以上をBulky massとする場合があります。

memo

リンパ腫の治療を行った際、効果を判断する用語(効果判定基準こうかはんていきじゅん)があります。FDG-PET/CTを用いて、リンパ節やリンパ節外病変の大きさ、臓器の腫れ、新しく病変ができていないか、骨髄の浸潤などを確認し、薬の効果を確認します。その際、以下のような略語で分けて判断します1)

  • CR(complete response):完全奏効  
  • PR(partial response):部分奏効
  • RD(relapse disease):再発
  • SD(stable disease):安定
  • PD(progressive disease):進行

進行期(病期III/IV期)のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の患者さんでは
どのような治療が行われますか?

進行期(病期III/IV期)の患者さんでは、分子標的薬や化学療法による薬物療法が行われます。患者さんの年齢や併存疾患・合併症の有無などを考慮してお薬の種類、放射線療法の追加、治療期間を検討します1)
初回の治療でがん細胞がすべて消えた場合には、治療を行わず経過観察(無治療経過観察)をすることがあります1)
治療前に大きな病変(Bulky mass)がある高齢患者さんでは、放射線療法を追加することがあります1)

進行期の患者さんに行われる主な治療法

化学療法
(多剤併用化学療法)

殺細胞性の薬(抗がん剤)はがん細胞の分裂、DNA合成を阻害することで増殖を抑制します2,3)
複数の抗がん剤を組み合わせた治療法を多剤併用化学療法といい、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の一次治療として広く実施されています1)

分子標的薬

がん細胞の増殖に関わるタンパク質や、がんを攻撃する免疫に関わるタンパク質(分子)などを標的にしてがんを攻撃するお薬を分子標的薬といいます4)
なかでも、特定のタンパク質を標的とするお薬を抗体薬といいます2)

抗CD20抗体
(抗体医薬)

がん細胞の表面に出現している抗原分子に作用する分子標的薬のなかで、「CD20」に対して作用するお薬を「抗CD20抗体」といいます。国内のガイドラインにおいて、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の一次治療では抗CD20抗体と化学療法を併用した治療の実施が推奨されています1)

放射線療法

放射線は細胞分裂に必要な遺伝子に作用することでがん細胞が増えないようにしたり、細胞が新しい細胞に置き換わるときに脱落する仕組みを促すことでがん細胞を消滅させたり、少なくしたりします5)
進行期のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の患者さんでは、化学療法の後に放射線療法を行うことがあります1)

治療効果を得られない、再発した患者さんには
どのような治療を行いますか?

最初に行った治療の効果や再発までの期間、患者さんの年齢などによって治療方針を検討します1)
二次治療の薬物療法で一定の効果が得られた患者さんでは、実施可能であれば自家造血幹細胞移植を検討します1)
最初に行った治療で効果が得られなかった、がん細胞がなくなってから1年以内に再発した患者さんでは、患者さん自身のT細胞を用いたCAR-Tかーてぃー細胞療法が治療の選択肢になります1)

治療効果を得られない、再発した患者さんに行われる主な治療法

化学療法
(多剤併用化学療法)

殺細胞性の薬(抗がん剤)はがん細胞の分裂、DNA合成を阻害することで増殖を抑制します2,3)。複数の抗がん剤を組み合わせた治療法を多剤併用化学療法といいます。治療効果を得られなかったびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の患者さんでは、初回治療とは異なる薬剤を使用したり、薬剤の組み合わせを変更したりします。また、造血幹細胞移植と組み合わせて行うことがあります1)

分子標的薬

がん細胞の増殖に関わるタンパク質や、がんを攻撃する免疫に関わるタンパク質(分子)などを標的にしてがんを攻撃するお薬を分子標的薬といいます4)
なかでも、特定のタンパク質を標的とするお薬を抗体薬といいます2)

放射線療法

放射線は細胞分裂に必要な遺伝子に作用することでがん細胞が増えないようにしたり、細胞が新しい細胞に置き換わるときに脱落する仕組みを促すことでがん細胞を消滅させたり、少なくしたりします5)
治療効果を得られなかった、再発した患者さんでは、がんによる痛みや症状を緩和する目的として放射線療法を行うことがあります1)

造血幹細胞移植

患者さん本人の造血幹細胞の移植(自家造血幹細胞移植)、もしくはドナーから提供された造血幹細胞の移植(同種造血幹細胞移植)が選択される場合があります6)

CAR-T細胞療法

患者さんから採取したT細胞にキメラ抗原受容体(CAR)を人工的に発現させて、CAR-T細胞として培養して増やしたあと、患者さんの体内へ戻す治療法です7)

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造血幹細胞移植には、大きく2種類あります6)

自家造血じかぞうけつ幹細胞移植かんさいぼういしょく
患者さんご自身の細胞をあらかじめ採取・凍結し、大量化学療法後に解凍し移植する方法

同種造血どうしゅぞうけつ幹細胞移植かんさいぼういしょく
大量化学療法後、ドナーから提供された造血幹細胞を移植する方法

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の治療ではどのような副作用がありますか?

化学療法(多剤併用化学療法)

抗がん剤はDNA合成を阻害する作用を持ち、細胞の分裂に影響を与えるため、がん細胞だけではなく正常な細胞にも影響を及ぼします8)
主な副作用として骨髄抑制(好中球減少、血小板減少)、吐き気・嘔吐、下痢・便秘、口内炎、脱毛、頭痛、疲労感、手足のしびれ などがあらわれる場合があります4)

放射線療法

放射線療法では、疲労感、倦怠感、白血球減少、赤血球減少、血小板減少が発現する場合があるほか、皮膚のかゆみ・赤み、脱毛など、照射部位によってさまざまな副作用が起こる場合があります4,9)
また、治療を行ってから数ヵ月後に副作用が起こる場合があります2,10)

分子標的薬(抗CD20抗体を含む)

分子標的薬は、がん細胞に発現する分子を標的としています。しかし、標的とする分子を持っている正常細胞にも作用するため、副作用が発現すると考えられています。また、抗がん剤とは異なるタイプの副作用があらわれることがあります7)
分子標的薬の副作用として、腫瘍崩壊症候群に加えて、免疫に関わる抗体医薬の特徴から免疫抑制(免疫の働きが抑えられてしまうこと)が起こる場合があります4)。ほかにも発熱、吐き気、寒気、だるさ、皮膚の発疹などが起こる場合があります4)
お薬によっては、投与直後のアレルギー反応や輸注反応(インフュージョンリアクション; 発熱やかゆみなど)が起きることがあります4)

造血幹細胞移植

造血幹細胞移植では前処置として抗がん剤などを用いるため、使用するお薬に応じてさまざまな副作用があらわれる場合があります。また、移植後も感染症が起こりやすいので注意が必要です。同種造血幹細胞移植の場合、ドナーの細胞が患者さんの身体を攻撃する移植片対宿主病(GVHD)や、移植後3ヵ月以上経過してからも不整脈や心不全、甲状腺機能低下、骨粗鬆症などさまざまな合併症があらわれる場合があります6)

副作用に関しては、副作用の対処法のページもご参照ください。

[参考文献]

  1. 1)日本血液学会(編集)、造血器腫瘍診療ガイドライン 第3.1版(2024年版)―悪性リンパ腫 総論
    http://www.jshem.or.jp/gui-hemali/2_soron.html(別ウィンドウで開く))、
    びまん性大細胞型B細胞リンパ腫
    http://www.jshem.or.jp/gui-hemali/2_5.html(別ウィンドウで開く))、
    効果判定基準一覧
    http://www.jshem.or.jp/gui-hemali/table.html(別ウィンドウで開く))(2025年2月4日利用)
  2. 2)日本血液学会(編集)、血液専門医テキスト 改訂第4版、南江堂、2023、PP102-118、122-124、320-324
  3. 3)医療情報科学研究所、病気がみえる vol.5 血液 第3版、メディックメディア、2023、PP118-137
  4. 4)国立がん研究センターがん情報サービス、がんになったら手にとるガイド普及新版、学研メディカル秀潤社、2017、PP139-156
  5. 5)国立がん研究センターがん情報サービス.放射線治療
    https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/radiotherapy/index.html(別ウィンドウで開く))(2025年2月4日利用)
  6. 6)国立がん研究センター.がん情報サービス.造血幹細胞移植
    https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/HSCT/index.html(別ウィンドウで開く))(2025年2月4日利用)
  7. 7)国立がん研究センター がん情報サービス.免疫療法 もっと詳しく
    https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/immunotherapy/immu02.html(別ウィンドウで開く))(2025年2月4日利用)
  8. 8)吉村知哲、田村和夫(監修)、がん薬物療法副作用管理マニュアル 第3版、医学書院、2024、PP1-6
  9. 9)国立がん研究センター. がん情報サービス. 放射線治療の実際.
    https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/radiotherapy/rt_02.html(別ウィンドウで開く))(2025年2月4日利用)
  10. 10)日本放射線腫瘍学会(編集)、放射線治療計画ガイドライン2024年版、金原出版、2024、PP57ー68

2025年3月掲載
JP-VEN-240030-2.0