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びまんせい大細胞型だいさいぼうがたB細胞リンパ腫とは

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫とはどのような病気ですか?

リンパ腫とは、⽩⾎球の⼀種であるリンパ球ががん細胞となって増殖する病気で、がん化したリンパ球の種類や成⻑段階などをもとに分類されます1-3)
「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫」は英語で「Diffuse Large B-Cell Lymphoma」と表記されるため、「DLBCL(ディーエルビーシーエル)」という略称で呼ばれることもあります。
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫は、大型のB細胞由来のがん細胞が「びまん性(広い範囲)」に増殖していることが特徴の血液がんで、非ホジキンリンパ腫のB細胞リンパ腫に分類されます4,5)。発症の原因として、身体全体にある免疫器官の1つであるリンパ節6)の「胚中心」に集積するB細胞の遺伝子に異常が起こり、がん化すると考えられています4)
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫は、国内のリンパ腫で最も多いタイプです。非ホジキンリンパ腫の30~40%を占め4)、年間約15,000人が診断されます7)。患者さんの多くは60歳代後半です4)

リンパ節の構造 胚中心
ヒトの身体にはリンパ節という免疫器官があります。リンパ節の中にB細胞が集まり、成長するリンパ濾胞という場所があります。リンパ濾胞は胚中心、マントル層、辺縁帯という3層で構成されています。

日本血液学会(編集)、造血器腫瘍診療ガイドライン 第3.1版(2024年版)―悪性リンパ腫 総論(http://www.jshem.or.jp/gui-hemali/2_soron.html(別ウィンドウで開く))、
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(htthttp://www.jshem.or.jp/gui-hemali/2_5.html(別ウィンドウで開く))(2025年2月4日利用)
伊豆津宏二(監修)、血液のがんがわかる本 リンパ腫・白血病・多発性骨髄腫、講談社、2023、PP31-52
鈴木隆浩、他(編集)、専門医のための血液病学、医学書院、2022、PP209-212より作図

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リンパ節の中には、B細胞が集積する「リンパ濾胞」があります。リンパ濾胞は、胚中心、マントル層、辺縁帯の3層から構成されています。
胚中心では、B細胞が体内に侵入したウイルスや細菌などを認識し(抗原提示といいます)、ウイルスや細菌を攻撃する抗体をつくる形質細胞に分化します8,9)

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫は、月単位で進行する「アグレッシブリンパ腫(中悪性度)」に分類され10)、診断されたらすぐに治療を開始する必要があります4)。また低悪性度(インドレントリンパ腫)のB細胞リンパ腫からびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に移行(組織学的進展といいます)することもあり、病気の様態は患者さんによってさまざまです10)

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リンパ腫の中でも、病気が進行するスピード(悪性度の高さ)がゆっくりなリンパ腫を、「インドレントリンパ腫(低悪性度)」といいます10)
月単位や週単位で進行するスピードの速いリンパ腫を、「アグレッシブリンパ腫(中悪性度)」、「高度アグレッシブリンパ腫(高悪性度)」といいます10)

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫はがん化した血液細胞の成熟段階や遺伝子の異常、がん細胞がある部位などによって複数の「亜型あけい(サブタイプ)」が存在し、いずれにも属さないDLBCLを「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫・非特定型(DLBCL,NOS)」と呼びます4,7)。サブタイプによって病気の見通し(予後よご)が異なります4,7)

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫ではどのような症状があらわれますか?

リンパ腫では、がん化したリンパ球がリンパ管を通じて全身を巡るため、首やわきの下、太ももの付け根の上あたり(鼠径部そけいぶ)などのリンパ節でがん細胞が増殖し、リンパ節が腫れたり(腫脹しゅちょう)、しこり・こぶ(腫瘤しゅりゅう)をつくったりします2)。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫では多くの場合、痛みなどの症状を感じません4)

memo リンパ節の大きさや数が増加した状態のことを「リンパ節腫脹」といいます。リンパ節腫脹はリンパ腫だけでなく、ウイルスなどの感染症などでもみられ、直径1.5cm超のものが腫大リンパ節と定義されてます11)。リンパ腫の場合、かたさは柔~硬で弾性があり、圧痛はないものが多いとされています12)

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫では患者さんの約40%にリンパ節外臓器への浸潤しんじゅん(がん細胞が周辺の組織に入り込むこと)がみられ4)、リンパ節内の病変びょうへんを「節性病変せつせいびょうへん」、リンパ節外の臓器の病変を「節外病変せつがいびょうへん」といいます4,10)
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の節外病変は特に胃に生じることが多く、そのほか肝臓・腎臓の機能低下、神経・骨の精密検査での指摘から発見されることがあります4)
また、患者さんの約30%に、ひどい寝汗(盗汗とうかん)、発熱、急激な体重減少、全身倦怠感などの症状が出ることがあります4)。腫れやしこりが大きくなることで、尿の通路(尿管)や静脈、脊髄などの臓器が圧迫されて、尿が出にくくなったり、むくみや麻痺を生じたりします2,9,12)

病気が進行したときのびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の主な症状

  • 発熱(38℃以上の熱が続き、他の原因がないもの)
  • 体重減少(ダイエットをしていないのに半年間で10%以上の体重減少)
  • ひどい寝汗(盗汗)(一晩にシーツや掛け布団を取り替えなくてはならないくらいの大量の寝汗)
  • 全身の倦怠感
  • 食欲不振
  • むくみ、腹水、胸水

木崎昌弘(監修)、血液のがん 悪性リンパ腫・白血病・多発性骨髄腫、主婦の友社、2020、PP27-64
国立がん研究センター. がん情報サービス. びまん性大細胞型B細胞リンパ腫
https://ganjoho.jp/public/cancer/DLBCL/index.html(別ウィンドウで開く))(2025年2月4日利用)より作表

memo発熱、体重減少、ひどい寝汗(盗汗)の症状を「B症状」といいます。

病期とは何ですか?

リンパ腫の場所や広がり、進行の程度、症状、全身の状態などを踏まえて、がんの状態を示す指標を「病期」といいます10,13)。リンパ腫は病気(病変びょうへん)の広がり方によって4つの病期(Ⅰ期~Ⅳ期)に分けられます。リンパ節の腫れやしこり(=病変)が限られた範囲にとどまっている状態のI期とⅡ期を「限局期」、より広い範囲に病変が広がっている状態のⅢ期とⅣ期を「進行期」といいます。
病期は、診察や画像検査(レントゲン、CT、MRI、FDG-PETなど)、骨髄穿刺・骨髄生検など複数の検査によって決定します。決定した病期に基づいて治療方針を検討します10)

病期分類
リンパ腫では病気の広がり方によって4つの病期に分けられます。病気の広がりが限られた範囲の場合は限局期といい、Ⅰ期とⅡ期が該当します。Ⅰ期はリンパ節の病変が1ヵ所のリンパ節だけにある、またはリンパ節外の病変が1ヵ所だけにある場合です。Ⅱ期は横隔膜の上または下側のどちらか一方に、リンパ節の病変が2ヵ所以上ある状態です。 病気がより広い範囲に広がっている状態を進行期といい、Ⅲ期とⅣ期が該当します。Ⅲ期は横隔膜の上下両方のリンパ節の病変が2ヵ所以上ある状態です。Ⅳ期はリンパ節だけでなく、リンパ節以外の臓器、皮膚、骨髄、血液中などに病気が広がっている状態です。

木崎昌弘(監修)、血液のがん 悪性リンパ腫・白血病・多発性骨髄腫、主婦の友社、2020、PP27-64
⽇本⾎液学会(編集)、造⾎器腫瘍診療ガイドライン 第3.1版(2024年版)―悪性リンパ腫 総論(http://www.jshem.or.jp/gui-hemali/2_soron.html(別ウィンドウで開く))、
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(http://www.jshem.or.jp/gui-hemali/2_5.html(別ウィンドウで開く))(2025年2月4日利用)より作図

[参考文献]

  1. 1)伊豆津宏二(監修)、血液のがんがわかる本 リンパ腫‧白血病‧多発性骨髄腫、講談社、2023、PP9-52
  2. 2)木崎昌弘(監修)、血液のがん 悪性リンパ腫‧白血病‧多発性骨髄腫、主婦の友社、2020、PP22-64
  3. 3)神田善伸(監修)、ウルトラ図解血液がん、法研、2020、PP11-44
  4. 4)日本血液学会(編集)、血液専門医テキスト 改訂第4版、南江堂、2023、PP320-324
  5. 5)佐藤 初代: 医学検査、71、106–144(2022)
  6. 6)国立がん研究センターがん情報サービス.がんに関する用語集ーリンパ節
    https://ganjoho.jp/public/qa_links/dictionary/dic01/modal/lymph_setsu.html(別ウィンドウで開く))(2025年2月4日利用)
  7. 7)松村 到、他(編集)、血液疾患最新の治療2023-2025、南江堂、2022、PP159-163
  8. 8)鈴木隆浩、他(編集)、専門医のための血液病学、医学書院、2022、PP209-212
  9. 9)医療情報科学研究所、病気がみえる vol.5 血液 第3版、メディックメディア、2023、PP2-13、PP192-197、202-207
  10. 10)日本血液学会(編集)、造血器腫瘍診療ガイドライン 第3.1版(2024年版)―悪性リンパ腫 総論
    http://www.jshem.or.jp/gui-hemali/2_soron.html(別ウィンドウで開く))、
    びまん性大細胞型B細胞リンパ腫
    http://www.jshem.or.jp/gui-hemali/2_5.html(別ウィンドウで開く))(2025年2月4日利用)
  11. 11)日本血液学会、他(編集)、造血器腫瘍取扱い規約 2010年3月 第1版、金原出版、2010、PP141-149
  12. 12)国立がん研究センター がん情報サービス. びまん性大細胞型B細胞リンパ腫.
    https://ganjoho.jp/public/cancer/DLBCL/index.html(別ウィンドウで開く))(2025年2月4日利用)
  13. 13)国立がん研究センター がん情報サービス. がんの病期のことを知る.
    https://ganjoho.jp/public/dia_tre/dia_tre_diagnosis/stage.html(別ウィンドウで開く))(2025年2月4日利用)

2025年3月掲載
JP-VEN-240030-2.0