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慢性まんせいリンパせい白血病はっけつびょうの治療法

はじめて慢性リンパ性白血病と診断された患者さんでは、
どのような治療が行われますか?

慢性リンパ性白血病を含むがんの治療では、患者さんの状態に最適な治療方法を担当医と一緒に相談しながら決定していきます。
慢性リンパ性白血病と診断されても、症状がなく、病気が進行していない場合は、治療をせずに経過を観察します(無治療経過観察)1)
急速なリンパ球の増加や赤血球・血小板の減少、リンパ節や肝臓・脾臓の腫れが増えるなどの病気の進行が認められた場合や、慢性リンパ性白血病が原因と思われる発熱や倦怠感などの症状が認められた場合、治療開始を検討します1)。高齢の患者さんや合併症などによって全身状態が悪い患者さんでは、薬物療法を行うことで副作用などがあらわれる可能性があるため、治療を開始する時期は慎重に判断します1)

はじめての慢性リンパ性白血病治療では「分子標的薬」を用いた治療法が標準治療として行われます1)。染色体や遺伝子に異常がなく、全身状態の良い患者さんでは、化学療法と抗CD20抗体薬を併用した「免疫化学療法」なども治療選択肢となります1)
また、異常な抗体の出現による赤血球や血小板の減少(自己免疫性血球減少症)が認められた場合には、慢性リンパ性白血病による症状のない患者さんではステロイドによる治療を、症状のある患者さんでは分子標的薬による治療を考慮します1)

はじめて慢性リンパ性白血病と診断された患者さんで行われる主な治療法

分子標的薬

がん細胞の増殖に関わるタンパク質や、がんを攻撃する免疫に関わるタンパク質(分子)などを標的にしてがんを攻撃するお薬を分子標的薬といいます2)
初回の慢性リンパ性白血病治療では、染色体や遺伝子の異常、年齢などにかかわらず分子標的薬が治療選択肢になります1)

化学療法
(免疫化学療法)

殺細胞性のお薬(抗がん剤)はがん細胞の分裂、DNA合成を阻害することで増殖を抑制します3,4)
慢性リンパ性白血病の治療では、染色体や遺伝子の異常がなく、全身状態が良い患者さんに対して化学療法と抗CD20抗体を併用した免疫化学療法が用いられることがあります1)

ステロイド治療

慢性リンパ性白血病患者さんの約10%に「自己免疫性血球減少症(AIC)」の合併がみられます1)。症状がない非活動性の慢性リンパ性白血病に合併したAICに対してはステロイド治療を行います1)

memo

患者さんの全身状態を評価する指標の「パフォーマンス・ステータス(PSピーエス)」、持病の種類や数で評価する「併存疾患指数」などの高齢者機能評価によって、標準治療が実施可能な場合を「fitフィット」、標準治療が推奨されない場合を「unfitアンフィットといいます1)
がんに対する積極的な治療ではなく、症状緩和の治療(支持療法;ベスト・サポーティブ・ケア)を行うことが考慮される場合を「frailフレイル」といいます1)

慢性リンパ性白血病が
再発した患者さんでは、
どのような治療が行われますか?

慢性リンパ性白血病が再発した場合の治療のことを「二次治療」といいます。染色体異常や遺伝子異常の有無、年齢、全身状態、合併症などに加えて、前回の治療(一次治療)で治療の効果が得られたか、副作用がどのくらいであったか、再発までどのくらいの期間であったかなどを考慮して、二次治療の治療法を選択します1)。また、前回の治療で分子標的薬を使用した患者さんでは、異なる分子標的薬が選択されます1)

治療の効果が得られて、症状が軽減・消失する「寛解かんかい」となった患者さんでは、特定の染色体や遺伝子に異常がない場合は二次治療の種類によって治療継続または経過観察となり、異常が認められる場合には同種造血幹細胞移植が検討されます1)
一部の患者さんでは組織学的な変化を起こして、急激に病気が進行することがあります(リヒター症候群)。リヒター症候群の患者さんでは病理検査を行い、診断結果に基づいた免疫化学療法が行われます1)

慢性リンパ性白血病が再発した患者さんで行われる主な治療法

分子標的薬

がん細胞の増殖に関わるタンパク質や、がんを攻撃する免疫に関わるタンパク質(分子)などを標的にしてがんを攻撃するお薬を分子標的薬といいます2)
再発した慢性リンパ性白血病治療では、前回の治療と異なる分子標的薬が選択されます1)

化学療法
(免疫化学療法)

殺細胞性の薬(抗がん剤)はがん細胞の分裂、DNA合成を阻害することで増殖を抑制します3,4)
リヒター症候群となった患者さんでは、病理検査の結果に基づいて化学療法と抗CD20抗体などを併用した免疫化学療法が治療選択肢になります1)

造血幹細胞移植

ドナーから提供された造血幹細胞を移植(同種造血幹細胞)します5)。再発した慢性リンパ性白血病では、特定の染色体・遺伝子に異常がある患者さんやリヒター症候群となった患者さん、分子標的薬で効果が得られなかった患者さんで同種造血幹細胞移植が検討されることがあります1)

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慢性リンパ性白血病の治療では、リンパ節や肝臓・脾臓の腫れの大きさの変化、身体症状の有無、血液中のリンパ球数、正常な血液細胞をつくる機能(造血機能)をみて、治療の効果を判定します1)。症状が軽減・消失して、造血機能が回復することを「寛解かんかい」といいます4)

慢性リンパ性白血病の治療ではどのような副作用がありますか?

分子標的薬

分子標的薬は、がん細胞に発現する分子を標的としています。しかし、標的とする分子を持っている正常細胞にも作用するため、副作用が発現すると考えられています。また、抗がん剤とは異なるタイプの副作用があらわれることがあります6)
分子標的薬の副作用として、腫瘍崩壊症候群に加えて、免疫に関わる抗体医薬の特徴から免疫抑制(免疫の働きが抑えられてしまうこと)が起こる場合があります2)。 ほかにも骨髄抑制、感染症、出血、発熱、吐き気、寒気、だるさ、皮膚の発疹などが起こることがあります2)。お薬によっては、投与直後のアレルギー反応や輸注反応(インフュージョンリアクション:発熱やかゆみなど)が起きることがあります2)

化学療法

抗がん剤はDNA合成を阻害する作用を持ち、細胞の分裂に影響を与えるため、がん細胞だけではなく正常な細胞にも影響を及ぼします6)
主な副作用として(発熱性)好中球減少症、感染症、吐き気・嘔吐、下痢・便秘、口内炎、脱毛、頭痛、疲労感、手足のしびれなどがあらわれることがあります2)

造血幹細胞移植

造血幹細胞移植では前処置として抗がん剤などを用いるため、使用するお薬に応じて様々な副作用があらわれる場合があります。また、移植後も感染症が起こりやすいので注意が必要です。同種造血幹細胞移植の場合、ドナーの細胞が患者さんの身体を攻撃する移植片対宿主病(GVHD)や、移植後3ヵ月以上経過してからも不整脈や心不全、甲状腺機能低下、骨粗鬆症などさまざまな合併症があらわれる場合があります5)

副作用に関しては、副作用の対処法のページもご参照ください。

[参考文献]

  1. 1)日本血液学会(編集)、造血器腫瘍診療ガイドライン 第3.1版(2024年版)―慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫(CLL/SLL)
    http://www.jshem.or.jp/gui-hemali/1_5.html(別ウィンドウで開く))(2025年2月4日利用)
  2. 2)国立がん研究センターがん対策情報センター.患者必携 がんになったら手に取るガイド 普及新版、学研メディカル秀潤社、2017、PP139-149
  3. 3)日本血液学会(編集)、血液専門医テキスト 改訂第4版、南江堂、2023、PP102-107
  4. 4)医療情報科学研究所、病気がみえる vol.5 血液 第3版、メディックメディア、2023、PP118-137
  5. 5)国立がん研究センターがん情報サービス.造血幹細胞移植
    https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/HSCT/index.html(別ウィンドウで開く))(2025年2月4日利用)
  6. 6)吉村 知哲、田村 和夫(監修)、がん薬物療法副作用管理マニュアル 第3版、医学書院、2024、PP1-6

2025年3月掲載
JP-VEN-240030-2.0