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  3. 慢性リンパ性白血病の検査と診断

慢性まんせいリンパせい白血病はっけつびょうの検査と診断

  1. I.白血病はどのように診断するのですか?

    慢性白血病の初期は自覚症状が乏しく、健康診断などで無症状のまま発見されることが多いといわれています1,2)。健康診断の血液検査などで異常がみられた場合、くわしく検査を行います2)
    血液検査で、赤血球、白血球、血小板などの血液細胞の数やかたち、異常な血液細胞(白血病細胞)の有無を調べます2,3)
    血液検査の結果から白血病が疑われる場合、骨髄検査(骨髄穿刺こつずいせんし骨髄生検こつずいせいけん)を行って血液細胞が正常につくられているか、骨髄内の白血病細胞の割合などを確認します2)

  2. II.慢性リンパ性白血病はどのように診断するのですか?

    血液中のリンパ球の数が異常に増加して3ヵ月以上持続している場合、また増加したリンパ球が「成熟」している場合は慢性リンパ性白血病が疑われます2,4)
    慢性リンパ性白血病細胞の細胞表面には「CD5」と「CD23」という「抗原(マーカー)」がみられるため、骨髄検査で採取した検体を使って「細胞表面マーカー検査(フローサイトメトリー)」を行い、CD5やCD23の発現状況を確認することでほかの病気と鑑別します2,4)。また、慢性リンパ性白血病では異常なリンパ球が増加することで、体内に侵入した異物を攻撃する「抗体」(「免疫グロブリン」ともいいます)を作る機能が低下するため、患者さんの体内の免疫グロブリンの状態を確認することもあります4,5)

問診・触診

初期は自覚症状が少ないため、全身のだるさやリンパ節の腫れ、肝臓や脾臓が腫れることによる腹部の張りなどを確認します3)
自覚症状のある患者さんでは、いつ頃から発熱や倦怠感、出血傾向などが出現しているかを問診し、顔色や歯ぐき・鼻・皮下の出血や全身症状の有無を確認します1)

血液検査

赤血球・白血球・血小板の数、白血球の種類別の割合、血液細胞のかたちや異常な血液細胞(白血病細胞)の有無などを確認します1-3)
B細胞の数が異常に増えている状態(5,000/μL以上)が3ヵ月以上持続していると、慢性リンパ性白血病が疑われます4)

骨髄検査

血液検査で白血病を疑われた場合、診断を確定するために骨髄液や骨髄組織を採取して、くわしく検査します(骨髄穿刺または骨髄生検)3)
骨髄穿刺は骨髄に針を刺し、骨髄液を吸引します。骨髄生検は、やや太い針で骨髄組織の一部を採取します。採取した骨髄液や骨髄組織を用いて、血液細胞(芽球など)の形や性質、白血病細胞の割合などを顕微鏡で調べます2,3,5)

細胞表面マーカー検査、染色体検査、遺伝子検査

骨髄生検などで採取した組織切片を用いて細胞表面マーカー検査(フローサイトメトリー)や染色体検査、遺伝子検査を行います4)
慢性リンパ性白血病患者さんの特徴として、がん細胞の表面にCD5、CD23という抗原(マーカー)がみられ、「17p」という染色体の異常や「TP53」という遺伝子の異常がみられる場合があります4)

画像検査

胸部X線検査、腹部超音波検査やCT検査などで肝臓や脾臓、リンパ節の腫れの有無や大きさを確認して、病気の進行の程度(病期)を評価します6)

memo血液のがんでは染色体の数の増減や、構造に異常がみつかることがあります2)
慢性リンパ性白血病では「欠失(同じ染色体の中で一部が欠失する状態)」と呼ばれる染色体異常が認められることがあります4)

慢性リンパ性白血病はいつ治療を開始しますか?

慢性リンパ性白血病は、患者さんの状態によってはすぐに積極的な治療を始めずに様⼦をみることがあります(無治療経過観察むちりょうけいかかんさつ1,6)
白血病細胞の増加、赤血球・血小板の減少の有無や程度、リンパ節や肝臓・脾臓の腫れの有無などから病気の進行が認められた患者さんや、発熱や倦怠感などの症状があらわれた患者さんでは治療を開始します1,3)
しかし、高齢の患者さんでは、治療を行うことで合併症などが起こらないように治療開始時期を慎重に検討します6)

慢性リンパ性白血病の 治療開始規準

以下の項目のいずれかに該当すれば、治療開始を検討します。

  • 骨髄機能の低下による貧血や血小板の減少の出現や増悪
    (ヘモグロビン値:<10g/dL、血小板数:<10万/μL)
  • 脾臓の腫れが大きくなった
  • リンパ節のかたまり、腫れが大きくなった
  • リンパ球数が2ヵ月以内に50%超、6ヵ月以内に2倍以上に増加した
  • ステロイドや他の治療で改善しない自己免疫性貧血や血小板減少症
  • 症状があらわれたり、臓器の機能に影響する骨髄以外の病変(皮膚、腎臓、肺、脊髄など)
  • 慢性リンパ性白血病が原因と思われる以下の症状があらわれた

    • 体重減少(半年以内に10%以上)
    • 生活に支障をきたすような倦怠感
    • 感染症ではないのに38℃以上の発熱が2週間以上続く
    • 感染症ではないのに大量の寝汗が1ヵ月以上続く

伊豆津宏二(監修)、血液のがんがわかる本 リンパ腫・白血病・多発性骨髄腫、講談社、2023、PP53-70、
日本血液学会(編集)、造血器腫瘍診療ガイドライン 第3.1版(2024年版)―慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫(CLL/SLL)
http://www.jshem.or.jp/gui-hemali/1_5.html(別ウィンドウで開く))(2025年2月4日利用) より作成

慢性リンパ性白血病はどのように治療方針を決めるのですか?

慢性リンパ性白血病患者さんの治療方針は、白血病細胞の特徴や患者さんの年齢・身体の状態を考慮して選択されます6)
慢性リンパ性白血病では「17p」という染色体や「TP53」という遺伝子の異常が認められることがあります。これらの異常がある患者さんでは病気の見通し(予後)が悪かったり、薬の効果が得られなかったりすることがあります。そのため、治療を開始する前に染色体や遺伝子の検査を行い、適切な治療を検討します6)
高齢の患者さんでは持病や合併症の有無などから身体の状況を評価し、若年者と同様の治療が行えるかを検討します6)

予後とはなんですか?

病気がどのような経過をたどるかという⾒通しのことを「予後よご」といい、予後に影響を与える要素(因⼦)を「予後因⼦」といいます1)。また、予後という⾔葉を「⽣存期間(どれくらい⽣きられるか)」に限定して使⽤されることもあります7)
慢性リンパ性白血病では、年齢や病期、身体の状態などが予後因⼦とされています。また、近年では「IGHV」という遺伝子の異常の有無、⾎液中のタンパク質(β2ミクログロブリン値)なども予後因⼦として検討されています6)

治療や生活について心配なことがある場合、どうすればよいですか?

がんの診断を受けることは衝撃的なことで、不安でいっぱいだと思います。しかし、慢性リンパ性白血病では新しいお薬が登場し、予後の改善が期待されます6)
がん患者さんとご家族はさまざまなサポートを受けることができますので、わからないこと‧詳しく知りたいことがあれば担当医の先生や看護師さんに相談してください。

[参考文献]

  1. 1)伊豆津宏二(監修)、血液のがんがわかる本 リンパ腫・白血病・多発性骨髄腫、講談社、2023、PP53-70
  2. 2)木崎昌弘(監修)、血液のがん 悪性リンパ腫・白血病・多発性骨髄腫、主婦の友社、2020、PP65-108
  3. 3)神田善伸(監修)、ウルトラ図解 血液がん、法研、2020、PP11-44
  4. 4)日本血液学会(編集)、血液専門医テキスト 改訂第4版、南江堂、2023、PP301-306
  5. 5)医療情報科学研究所、病気がみえる vol.5 血液 第3版、メディックメディア、2023、PP212-215
  6. 6)日本血液学会(編集)、造血器腫瘍診療ガイドライン 第3.1版(2024年版)―慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫(CLL/SLL)
    http://www.jshem.or.jp/gui-hemali/1_5.html(別ウィンドウで開く))(2025年2月4日利用)
  7. 7)国立国語研究所. 「病院の言葉」を分かりやすくする提案―予後
    https://www2.ninjal.ac.jp/byoin/teian/ruikeibetu/teiango/teiango-ruikei-a/yogo.html(別ウィンドウで開く))(2025年2月4日利用)

2025年3月掲載
JP-VEN-240030-2.0