1. TOPページ
  2. 慢性まんせいリンパせい白血病はっけつびょう(CLL)
  3. 慢性リンパ性白血病とは

慢性まんせいリンパせい白血病はっけつびょうとは

慢性リンパ性白血病とはどのような病気ですか?

⽩⾎病は血液細胞の元となる造⾎幹細胞ががん化することで、⾻髄のなかで異常な⾎液細胞が増殖します。白血病細胞となる細胞の種類(骨髄系またはリンパ系)や白血病細胞が増える速度(急性または慢性)によって白血病の種類は大きく4つに分けられます1-3)

「慢性リンパ性白血病」は英語で「Chronic Lymphocytic Leukemia」と表記されるため、「CLL(シーエルエル)」という略称で呼ばれることもあります。
国内で白血病と診断される人は年間約14,600人(男性8,600人、女性6,000人)で比較的男性に多く、年々増加傾向にあります4,5)。しかし日本では、慢性リンパ性白血病は白血病のなかでも数%というまれな疾患です2)。発症は高齢の方に多く、発症年齢中央値は約70歳で、男女比は1.5~2:1で男性に多くみられます4)

慢性リンパ性白血病は白血球の一種のリンパ球のうち、B細胞(Bリンパ球)ががん化することで発症します6)。がん化したB細胞は血管を流れる血液(末梢血)や骨髄に多くみられます6)

memo同じB細胞のがんでも、末梢血や骨髄にはほとんどみられず、骨髄外のリンパ節や脾臓などに多くみられる場合を「小リンパ球性リンパ腫(Small Lymphocytic Lymphoma:SLL(エスエルエル))」といいます7)
国際的な分類では、慢性リンパ性白血病と小リンパ球性リンパ腫は同じ病気とされています1,7)

慢性リンパ性白血病は進み方がゆっくりであることが多く、状態によってはすぐに治療を開始せず、様⼦をみることがあります(無治療経過観察むちりょうけいかかんさつ1,7)。異常なBリンパ球の増加や赤血球・血小板の減少、リンパ節や肝臓・脾臓の腫れなどから病気の進行が認められた患者さん、発熱や倦怠感などの症状があらわれた患者さんでは治療を開始します1,7)

memo一部の慢性リンパ性白血病では組織学的な変化を起こし、がん細胞がリンパ節や骨髄の中で急激に増える進行の速いリンパ腫に変化するため(「リヒター症候群」といいます)1,7)、患者さんの状態によって早急に治療を開始します。

慢性リンパ性白血病ではどのような症状があらわれますか?

慢性リンパ性白血病はゆっくりと進行するため、初期の段階では症状はありません1,2)。健康診断での血液検査でリンパ球の増加が認められたり、リンパ節や脾臓・肝臓の腫れ(「腫脹しゅちょう」)、貧血、血小板減少などの症状があらわれることで診断されることがあります4,6)。病気が進行すると、発熱、体重減少、盗汗(大量の寝汗)などのがんに関連する症状があらわれます4,6)
また、異常なBリンパ球が増加することで、体内に侵入した異物を攻撃する抗体を作る機能が低下して肺炎などの感染症にかかりやすくなったり、正常な血液細胞を攻撃する異常な抗体がつくられて貧血症状などがあらわれたりすることがあります3,8)

病気が進行したときの慢性リンパ性白血病の主な症状

患者さん自身でわかる症状

  • 発熱(38℃以上の熱が続き、他の原因がないもの)
  • 体重減少(ダイエットをしていないのに半年間で10%以上の減少)
  • ひどい寝汗(盗汗)(一晩にシーツや掛け布団を取り替えなくてはならないくらいの大量の寝汗)
  • 全身の倦怠感
  • 動悸・息切れ
  • 歯ぐきから出血したり、あざができやすくなる

日本血液学会(編集)、血液専門医テキスト 改訂第4版、南江堂、2023、PP301-306
国立がん研究センター がん情報サービス. 慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫.
https://ganjoho.jp/public/cancer/CLL/index.html(別ウィンドウで開く))(2025年2月4日利用)より作表

memo発熱、体重減少、ひどい寝汗(盗汗)の症状を「B症状」といいます。

病期とはなんですか?

がんの場所や広がり、進行の程度、症状、全身の状態などを踏まえて、がんの状態を示す指標を「病期」といいます9)。慢性リンパ性白血病では白血病細胞の増加、赤血球・血小板の減少の有無や程度、リンパ節や肝臓・脾臓の腫れの有無などから病期を判定し、治療の必要性や今後の見通しを検討します1,2)

改訂Raiの病期分類

低リスク(0期) 中間リスク(Ⅰ-Ⅱ期) 高リスク(Ⅲ-Ⅳ期)
末梢血Bリンパ球:>5,000/μL

骨髄リンパ球:>40%
末梢血Bリンパ球:>5,000/μL

骨髄リンパ球:>40%
末梢血Bリンパ球:>5,000/μL

骨髄リンパ球:>40%

リンパ節の腫れ(Ⅰ期)

肝臓および/または脾臓の腫れ(Ⅱ期)※1

リンパ節の腫れ※2,3

肝臓および/または脾臓の腫れ※2,3

貧血:ヘモグロビン値:<11g/dL
またはヘマトクリット値:<33%(Ⅲ期)※2

血小板数:<10万/μL(Ⅳ期)※3

表は横にスクロールできます

  1. ※1:Ⅱ期はリンパ節の腫れを伴わない場合があります。
  2. ※2:Ⅲ期はリンパ節、肝臓、脾臓の腫れを伴わない場合があります。
  3. ※3:Ⅳ期はリンパ節、肝臓、脾臓の腫れ、貧血を伴わない場合があります。

Rai KR, et al. Blood. 46(2): 219-234 (1975)、日本血液学会(編集)、造血器腫瘍診療ガイドライン 第3.1版(2024年版)―慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫(CLL/SLL)
http://www.jshem.or.jp/gui-hemali/1_5.html(別ウィンドウで開く))(2025年2月4日利用) より作成

Binetの病期分類

A期 B期 C期
ヘモグロビン値:≧10g/dL

血小板数:≧10万/μL

リンパ領域腫大:2ヵ所以下
ヘモグロビン値:≧10g/dL

血小板数:≧10万/μL

リンパ領域腫大:3ヵ所以上

ヘモグロビン値:<10g/dL
または
血小板数:<10万/μL

(リンパ領域腫大の数は規定しない)

表は横にスクロールできます

リンパ節領域は①頭頸部、②腋窩(わきの下)、③鼠径部、④脾臓、⑤肝臓の5領域で評価

Binet JL, et al. Cancer. 48(1): 198-206 (1981)、日本血液学会(編集)、造血器腫瘍診療ガイドライン 第3.1版(2024年版)―慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫(CLL/SLL)
http://www.jshem.or.jp/gui-hemali/1_5.html(別ウィンドウで開く))(2025年2月4日利用) より作成

[参考文献]

  1. 1)伊豆津宏二(監修)、血液のがんがわかる本 リンパ腫・白血病・多発性骨髄腫、講談社、2023、PP53-70
  2. 2)木崎昌弘(監修)、血液のがん 悪性リンパ腫・白血病・多発性骨髄腫、主婦の友社、2020、PP65-108
  3. 3)神田善伸(監修)、ウルトラ図解 血液がん、法研、2020、PP11-44
  4. 4)日本血液学会(編集)、血液専門医テキスト 改訂第4版、南江堂、2023、PP301-306
  5. 5)がん研究振興財団. がんの統計2024、2024、P65
  6. 6)国立がん研究センター がん情報サービス. 慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫.
    https://ganjoho.jp/public/cancer/CLL/index.html(別ウィンドウで開く))(2025年2月4日利用)
  7. 7)日本血液学会(編集)、造血器腫瘍診療ガイドライン 第3.1版(2024年版)―慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫(CLL/SLL)
    http://www.jshem.or.jp/gui-hemali/1_5.html(別ウィンドウで開く))(2025年2月4日利用)
  8. 8)医療情報科学研究所、病気がみえる vol.5 血液 第3版、メディックメディア、2023、PP212-215
  9. 9)国立がん研究センターがん情報サービス. がんの病期のことを知る
    https://ganjoho.jp/public/dia_tre/dia_tre_diagnosis/stage.html(別ウィンドウで開く))(2025年2月4日利用)

2025年3月掲載
JP-VEN-240030-2.0