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急性骨髄性白血病きゅうせいこつずいせいはっけつびょうの治療法

若年の急性骨髄性白血病の患者さんではどのような治療が行われますか?

急性骨髄性白血病を含むがんの治療では、患者さんの状態に最適な治療方法を担当医と一緒に相談しながら決定していきます。
はじめて急性骨髄性白血病と診断された場合には、基本的には治癒を目指した強力な化学療法を複数併用した治療(多剤併用化学療法)を開始します1)
骨髄の中の白血病細胞が減少し、血液検査で白血病細胞が検出されず、血液細胞の数が正常範囲になることを「完全寛解かんぜんかんかい」といい、完全寛解を目指した治療「寛解導入療法かんかいどうにゅうりょうほう」を行います2)
強力な化学療法は副作用も強いため、患者さんの年齢や臓器機能などから治療に耐えられるかを慎重に判断します1)。国内のガイドラインでは、生理的年齢65歳未満を若年者としています1)
寛解が得られた場合、治癒や再発防止を目的とした治療(寛解後療法かんかいごりょうほうといいます)を行い、患者さんによっては同種造血幹細胞移植を検討します1)
再発した患者さんや治療の効果が得られなかった患者さんでは、特定の遺伝子変異がないかを確認し、初回の化学療法とは異なる薬剤や、薬剤の組み合わせを変更した治療(救援療法といいます)を行います1,2)

若年の患者で行われる主な治療法

化学療法
(多剤併用化学療法)

殺細胞性のお薬(抗がん剤)はがん細胞の分裂、DNA合成を阻害することで増殖を抑制します2,3)。急性白血病の治療では、抗がん剤による化学療法が治療の中心となります4)
若年者の急性骨髄性白血病患者さんでは強力な化学療法を行います1)

分子標的薬

がん細胞の増殖に関わるタンパク質や、がんを攻撃する免疫に関わるタンパク質(分子)などを標的にしてがんを攻撃するお薬を分子標的薬といいます5)
再発した患者さんや治療効果が得られなかった患者さんでFLT3という遺伝子に異常が認められた場合、FLT3阻害薬というお薬を使用する場合があります1)

造血幹細胞移植

急性骨髄性白血病の患者さんでは、ドナーから提供された造血幹細胞の移植(同種造血幹細胞移植)が選択される場合があります1)

高齢の急性骨髄性白血病の患者さんではどのような治療が行われますか?

国内のガイドラインでは、生理的年齢65歳以上を高齢者としています1)
高齢の患者さんの場合には、白血病の予後因子や患者さんの全身状態、臓器機能、患者さんご本人・家族の希望、介護等の社会的サポートの有無によって、治療強度を検討します。全身状態や臓器機能が十分に保たれている場合には、若年者に準じた強力化学療法によって寛解を目指します1)
寛解が得られた患者さんでは寛解後療法を行い、染色体核型と遺伝子異常(変異)の状態から予後不良と判断された場合は同種造血幹細胞移植を行うことがあります1)
標準的な化学療法が不適応の高齢の患者さんでは、分子標的薬を用いた併用療法などが行われますが、全身状態や併存疾患の程度によって、がんに対する積極的な治療を行わずに症状緩和や生活の質の向上を目的としたベスト・サポーティブ・ケアが選択されることがあります1)

高齢の患者で行われる主な治療法

化学療法
(多剤併用化学療法)

殺細胞性の薬(抗がん剤)はがん細胞の分裂、DNA合成を阻害することで増殖を抑制します2,3)。急性白血病の治療では、抗がん剤による化学療法が治療の中心となります4)
体力のある高齢の患者さんでは強力な化学療法を行い、臓器機能や合併症の有無によって強度を弱めた化学療法を行うことがあります1)

分子標的薬

がん細胞の増殖に関わるタンパク質や、がんを攻撃する免疫に関わるタンパク質(分子)などを標的にしてがんを攻撃するお薬を分子標的薬といいます5)

造血幹細胞移植

急性骨髄性白血病の患者さんでは、ドナーから提供された造血幹細胞の移植(同種造血幹細胞移植)が選択される場合があります1)

急性骨髄性白血病の治療ではどのような副作用がありますか?

化学療法(多剤併用化学療法)

抗がん剤はDNA合成を阻害する作用を持ち、細胞の分裂に影響を与えるため、がん細胞だけではなく正常な細胞にも影響を及ぼします6)。 主な副作用として骨髄抑制(好中球減少、血小板減少)、心機能低下、吐き気・嘔吐、下痢・便秘、口内炎、脱毛、頭痛、疲労感、手足のしびれ などがあらわれる場合があります5)

分子標的薬

分子標的薬は、がん細胞に発現する分子を標的としています。しかし、標的とする分子を持っている正常細胞にも作用するため、副作用が発現すると考えられています。また、抗がん剤とは異なるタイプの副作用があらわれることがあります6)
分子標的薬の副作用として骨髄抑制、感染症、出血などが起こることがあります。ほかにも発熱、吐き気、寒気、だるさ、皮膚の発疹などが起こることがあります5)

造血幹細胞移植

造血幹細胞移植では前処置として抗がん剤などを用いるため、使用するお薬に応じて様々な副作用があらわれる場合があります。また、移植後も感染症が起こりやすいので注意が必要です。同種造血幹細胞移植の場合、ドナーの細胞が患者さんの身体を攻撃する移植片対宿主病(GVHD)や、移植後3ヵ月以上経過してからも不整脈や心不全、甲状腺機能低下、骨粗鬆症などさまざまな合併症があらわれる場合があります7)

副作用に関しては、副作用の対処法のページもご参照ください。

[参考文献]

  1. 1)日本血液学会(編集)、造血器腫瘍診療ガイドライン 第3.1版(2024年版)―急性骨髄性白血病
    http://www.jshem.or.jp/gui-hemali/1_1.html(別ウィンドウで開く))(2025年2月4日利用)
  2. 2)日本血液学会(編集)、血液専門医テキスト 改訂第4版、南江堂、2023、PP267ー279
  3. 3)医療情報科学研究所、病気がみえる vol.5 血液 第3版、メディックメディア、2023、PP118-137
  4. 4)木崎昌弘(監修)、血液のがん 悪性リンパ腫・白血病・多発性骨髄腫、主婦の友社、2020、PP65-108
  5. 5)国立がん研究センターがん対策情報センター.患者必携 がんになったら手にとるガイド 普及新版、学研メディカル秀潤社、2017、PP139-149
  6. 6)吉村知哲、田村和夫(監修)、がん薬物療法副作用管理マニュアル 第3版、医学書院、2024、PP1-6
  7. 7)国立がん研究センターがん情報サービス.造血幹細胞移植
    https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/HSCT/index.html(別ウィンドウで開く))(2025年2月4日利用)

2025年3月掲載
JP-VEN-240030-2.0