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  3. 急性骨髄性白血病の検査と診断

急性骨髄性白血病きゅうせいこつずいせいはっけつびょうの検査と診断

  1. I.白血病はどのように診断するのですか?

    急性白血病は発熱や全身のだるさなどから、風邪の症状で受診されたことがきっかけで発見に至ることも多い病気です1)。自覚症状に加えて、これまでにかかったことのある病気について、医師に伝えましょう。医師は、顔色や歯ぐき・鼻・皮下の出血の有無、リンパ節や腹部の腫れなどを確認します2)
    次に血液検査で、赤血球、白血球、血小板などの血液細胞の数やかたち、異常な血液細胞(白血病細胞)の有無を調べます2,3)
    血液検査の結果から白血病が疑われる場合、骨髄検査(骨髄穿刺こつずいせんし骨髄生検こつずいせいけん )を行って血液細胞が正常につくられているか、骨髄内の白血病細胞の割合などを確認します2)。骨髄内の白血病細胞の割合が20%以上(WHO分類の場合)であることが確認されると、急性白血病と診断されます2,3)

  2. II.急性骨髄性白血病はどのように診断するのですか?

    急性白血病と診断されたあと、白血病細胞となった血液細胞の種類(骨髄系、リンパ系)を確認し、「染色体核型」や「遺伝子の異常(変異)」を検査したうえでWHO分類やFAB分類を用いて病型を検討し、急性骨髄性白血病および病型が診断されます2,3,4)
    このほかにも、必要に応じて臓器に腫れや異常がないか調べるための画像検査などを行います3)

問診・触診

いつ頃から発熱や倦怠感、出血傾向などが出現しているかを問診し、顔色や歯ぐき・鼻・皮下の出血の有無、リンパ節や腹部の腫れなどを確認しながら、全身症状の有無を確認します1,2)
画像検査で肝臓や脾臓、リンパ節の腫れなどを確認することもあります1,3)

血液検査

赤血球・白血球・血小板の数、白血球の種類別の割合、血液細胞のかたちや異常な血液細胞(白血病細胞)の有無などを確認します1-3)
急性骨髄性白血病では、白血球の数が異常に多かったり、少なかったりします。赤血球や血小板は通常減少しています1)

骨髄検査

血液検査で白血病を疑われた場合、診断を確定するために骨髄液や骨髄組織を採取して、くわしく検査します(骨髄穿刺または骨髄生検)3)
骨髄穿刺は骨髄に針を刺し、骨髄液を吸引します。骨髄生検は、やや太い針で骨髄組織の一部を採取します。採取した骨髄液や骨髄組織を用いて、血液細胞(芽球など)の形や性質、白血病細胞の割合などを顕微鏡で調べます2,3,5)
骨髄中の白血病細胞の割合が20%以上(WHO分類の場合)であることが確認されると、急性白血病の診断が確定します2,3)

細胞表面マーカー検査、染色体検査、遺伝子検査

急性白血病の診断が確定した後、採取した骨髄液・骨髄組織から染色体や遺伝子に異常がないか確認して、急性白血病の種類や病型を診断します。
細胞表面マーカー検査では、白血球の表面にあるたんぱく質(抗原)を調べることで白血病の種類(骨髄性、リンパ性)を診断します2-5)
病型分類、治療法の選択、予後予測、治療効果判定のために染色体核型や遺伝子異常(変異)の検査を行います4)

memo染色体とは遺伝情報を担うDNAが折りたたまれたもので、細胞の核に含まれています3)。染色体の数や大きさ、形態などのことを染色体核型といいます。
血液のがんでは、染色体の数の増減や、構造に異常がみつかることがあります1)
急性骨髄性白血病では「転座(異なる2本の染色体が切断され、お互いの切断面が入れ替わって結合している状態)」や「逆位(同じ染色体の中で1~2ヵ所切断され、その断片が元の位置に逆の向きで再結合している状態)」と呼ばれる染色体の異常が認められます5,6)

急性骨髄性白血病はいつ治療を開始しますか?

急性白血病は週単位・月単位で進行し、治療を行わないと3ヵ月ほどで命にかかわるほど進行の速い病気です。そのため、診断後ただちに治療を開始する必要があります1-3)
はじめて急性骨髄性白血病と診断された場合には、基本的には治癒を目指した強力な化学療法を複数併用した治療(多剤併用化学療法たざいへいようかがくりょうほう)を開始します6)

急性骨髄性白血病はどのように治療方針を決めるのですか?

骨髄の中の白血病細胞が5%未満まで減少し、血液検査で白血病細胞が検出されず、白血球・赤血球・血小板の数が正常範囲になることを「完全寛解かんぜんかんかい」といいます1,4,5)。完全寛解を目指した「寛解導入療法かんかいどうにゅうりょうほう」によって寛解が得られた後、さらにその寛解の状態を強固にするために「寛解後療法かんかいごりょうほう」(「地固め療法じがためりょうほう」ともいいます)を行います4,5)
標準的な化学療法を受けた65歳未満の患者さんでは、70~80%の方が完全寛解を得られるといわれています6)。ただし、強力な化学療法は副作用も強く、その治療に耐えられるかを、患者さんの年齢や臓器機能(心機能、肺機能、肝機能、腎機能)、感染症の有無などによって慎重に判断します6)
また、治療方針を決定する際には「年齢」、「全身状態」、「感染症等の合併症の存在」という患者さん側の因子と、「染色体核型」、「遺伝子異常(変異)」、「細胞形態」などの白血病細胞側の因子を参考にして、「病気の見通し(予後)」を予測することが重要です。寛解までに要した治療回数も長期的な予後に関連します6)
こうした予後層別化因子によって、患者さんを良好群・中間群・不良群の3つに大別します4,6)

memo完全寛解(complete remission)とは、骨髄での血液をつくる能力(造血能)が回復し、異常検査所見や白血病による症状が消失した状態です2)
白血病細胞を顕微鏡で検出できない状態まで減らす「形態学的完全寛解」と、PCR法という遺伝子検査でも検出できないまでに減らす「分子生物学的完全寛解」とがあります。寛解導入療法では、まず形態学的完全寛解を目指します2)

治療や生活について心配なことがある場合、どうすればよいですか?

がんの診断を受けることは衝撃的なことで、不安でいっぱいだと思います。急性骨髄性白血病治療は、多くの臨床試験が行われ発展してきました7)
がん患者さんとご家族はさまざまなサポートを受けることができますので、わからないこと‧詳しく知りたいことがあれば担当医の先生や看護師さんに相談してください。

[参考文献]

  1. 1)伊豆津宏二(監修)、血液のがんがわかる本 リンパ腫・白血病・多発性骨髄腫、講談社、2023、PP53-70
  2. 2)木崎昌弘(監修)、血液のがん 悪性リンパ腫・白血病・多発性骨髄腫、主婦の友社、2020、PP65-108
  3. 3)神田善伸(監修)、ウルトラ図解 血液がん、法研、2020、PP11-76
  4. 4)日本血液学会(編集)、血液専門医テキスト 改訂第4版、南江堂、2023、PP72-76、267-279
  5. 5)医療情報科学研究所、病気がみえる vol.5 血液 第3版、メディックメディア、2023、PP14-33、118-129、138-151
  6. 6)日本血液学会(編集)、造血器腫瘍診療ガイドライン 第3.1版(2024年版)―急性骨髄性白血病
    http://www.jshem.or.jp/gui-hemali/1_1.html(別ウィンドウで開く))(2025年2月4日利用)
  7. 7)松村 到、他(編集)、血液疾患最新の治療2023-2025、南江堂、PP111-114

2025年3月掲載
JP-VEN-240030-2.0