患者さんの声
このコーナーでは、患者さんが疾患や日常生活の中で感じる悩み・課題にどのように向き合われてきたのか、また同じ疾患の患者さんへのメッセージなどについてご紹介しています。
第3回
立ち止まる時があっても、前だけは向いていて
プロフィール
齊藤 治夫 さん
67歳、男性
20年前に慢性リンパ性白血病(CLL)を発症。2度の再発を経験し、現在3回目の治療中。
2020年に「CLL(慢性リンパ性白血病)患者・家族の会」を立ち上げ、代表を務める。
慢性リンパ性白血病(CLL)診断までの経緯
診断のきっかけは人間ドッグでした。宿泊設備が整った検診施設で検査が受けられると聞き、妻と一緒に軽い気持ちで受診したところ、「白血球数がとても多いので、できるだけ早く血液内科を受診してください」と言われました。
馴染みのない診療科だったこともあり、「これはただごとではない」と感じて、すぐに会社近くの病院を受診し、血液検査や骨髄穿刺等により、CLLと診断されました。この検査期間中にインターネットで調べ、ある程度は病名を予想していたものの、正式に告知された時には驚き、動揺したことを覚えています。
初回治療と感染対策の徹底
その後、経過観察が始まり、実際に治療を開始したのは診断から2年後のことでした。白血球数の急増と血小板数の急激な低下が認められ、治療を始めることになりました。主治医の説明を通して、「治療は悪化を食い止めるために行う」と納得していたため、治療が始まることで気持ちが落ち着きました。
治療が始まると体調の波や副作用もありましたが、主治医に相談して対処していただいたので、それほどつらくは感じませんでした。
治療中は感染症を予防するため、自宅に加湿器や空気清浄機を設置し、家族全員が手洗い・うがいを徹底してくれました。通勤時は必ずマスクを着用し、電車内では咳き込む人からすぐに遠ざかれるよう、座らず、端のほうに立つなどの工夫をしました。
会社には必要なことだけ伝え、求めすぎないことも大切
会社には最初からCLLであることを伝えていたので、配慮をしてくれる方もいました。また、治療中は傷病手当金を支給してもらえたため、経済的にとても助けられました。
ただ、事務所での感染症対策は残念ながら不十分でした。また、私は当時営業職だったのですが、マスクを着用して顧客と会うことに理解を得られませんでした。当時はコロナ禍前であり、業務で常時マスクを着用することに違和感をもつ方が多かったことも一因でした。治療中の半年間は休職を余儀なくされ、顧客との関係性や築き上げてきたキャリアがリセットされることに、寂しさや悔しさがありました。
会社に病気を伝える際には、過剰な反応や配慮が起きないよう、必要なことを伝え、相手に求めすぎず、自分でできることは自分ですることが大切だと思います。
制度を知らず苦労した経験から、社会保険労務士の資格を取得
治療を受けていた時期には、社会保障制度に助けられましたが、最初は高額療養費制度や傷病手当金などの知識がなく、がん相談支援センターの存在も知りませんでした。日本の制度は本人や家族からの自主的な申し出が必要であるため、制度を知らなければ支援を受けられないことを痛感しました。そこで、その分野の専門である社会保険労務士の勉強を始め、2017年に資格を取得しました。
再発を知らされたのは、その翌年で、初回治療から10年後でした。定年間近であったため、「継続雇用されなかったとしても構わない」と落ち着いて受け止めることができ、社会的な不安はありませんでした。また、新しい治療選択肢が登場するなど、治療環境が大きく進歩していたので、初回治療時とは心持ちが違いました。医師と相談の上、最終的には、初回治療と同じ治療を再度行うことになり、その治療も無事終了しました。
治療終了後は、「これからどう生きていくか」を考えるようになり、社会保険労務士としての知識を生かして、治療を受ける患者さんに経済的不安の対応策を伝えていきたいと思うようになりました。
患者会を通して、全国の仲間とオンラインでつながる
発症当初は、主にインターネットで情報を収集していましたが、一般的で無難な情報が多く、患者さんが知りたい具体的な情報は少ないと感じていました。次第に、同じ病気の仲間や治療されている先生方の話を聞きたいと思うようになり、血液疾患の患者会に参加しました。一方通行の情報ではなく、会話のキャッチボールができることの大切さを実感しました。
人と話すことはとても大切です。会話を通して、自分が大切にしたいことに気がついたり、誰かの役に立ちたいという気持ちをもつようになります。
CLLは希少疾患のため、血液疾患の患者会やセミナーでは、参加する患者さんも限られていました。「同じ病気の仲間とつながりたい」という思いが強まり、また周囲の後押しもあって、「CLL(慢性リンパ性白血病)患者・家族の会」を立ち上げることになりました。自信はありませんでしたが、多くの仲間や周囲の方々、顧問となってくださった先生の協力によって、2020年に設立することができました。
折しもコロナ禍の最中で、ウェブ会議システムが急速に普及したことから、数の少ないCLL患者さんが全国、さらには海外からも患者会に参加できるようになり、多くのつながりが生まれました。
同じ病気の仲間と支え合いながら、自分らしく歩み続ける
血液がんは種類や状態によって経過がさまざまですが、「何を大切にしたいのか」「これからどんな毎日を過ごしたいのか」を考えていくことが大切だと思います。
同じ病気と向き合う方には、「時に立ち止まってもいいので、前だけは向いていてください」と伝えたいです。今は自分のことだけで精一杯でも、落ち着いて周りを見てみると、思いがけないつながりや支えがあることに気づきます。意外なところで、意外な人が助けてくれるものです。私が患者会を立ち上げるときにも、多くの方に力を貸していただきました。
現在、妻と一緒に両親の介護も担いながら、3回目の治療に対して前を向いて取り組んでいます。同じ病気に向き合っている患者さんに、私の経験を少しでも生かしていただきたいです。
不安を抱えながらでも、希望をもち、周囲と支え合いながら歩んでいけたらと思っています。
2026年5月掲載
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