患者さんの声
このコーナーでは、患者さんが疾患や日常生活の中で感じる悩み・課題にどのように向き合われてきたのか、また同じ疾患の患者さんへのメッセージなどについてご紹介しています。
第2回
不安を受けとめ、人生を前に進める
プロフィール
我那覇 圭さん
45歳、男性
濾胞性リンパ腫(FL)の治療後、寛解状態を継続中
新聞記者として勤務。3人の子をもつ父親
(肩書などは取材当時)
濾胞性リンパ腫(FL)診断までの経緯
大学卒業後、新聞社に勤務していますが、地方支局での勤務を重ねた後、東京本社へ異動し、取材チームのキャップという責任ある立場につき、順風満帆な記者生活を送っていました。それが一変したのは3年前。早朝から編集作業をしていたところ、昼前からひどい吐き気が起こり、やむを得ず早退しました。帰宅途中に何度か嘔吐し、帰宅後も夜通し吐き気が続き、大変苦しみました。
翌日、近くのクリニックを受診して画像検査を受けたところ、「腹部のリンパ節が腫れている」と、大学病院を紹介されました。そこで精密検査を受け、妻の同席のもと、医師から「リンパ腫の疑いがある」と告げられたのです。
リンパ腫が「がん」だということは知っていたので、言われた瞬間に目がチカチカ して、意識が遠のくような感覚に襲われたと同時に、自身の最期を意識しました。
その後、病型を確定するための検査を受けたのですが、はっきりわかりませんでした。その病院には血液がんの専門医が常駐していなかったこともあり、がん専門病院に転院して、最終的に「濾胞性リンパ腫(FL)のステージ Ⅲ」と確定診断を受けました。
職場の理解と家族に支えられて
会社の上司には医師の診断をそのまま報告し、当面の休職を申し出ました。上司からは「すぐ休んで、治療に専念してください」と温かい言葉をかけていただきました。同僚は驚いていましたが、理解のある職場環境だったのでスムーズに休みに入ることができました。
妻も一緒に告知を聞いたのですが、動揺を見せず、「こうなったら受け止めて、前に進むしかない」と言ってくれたので、大きな支えになりました。
子どもは当時小学生2人と中学生。無用の不安や混乱を招かないよう、自分なりにかみくだいて説明できるようになるまで待ち、病型が確定してから血液がんだと伝えました。長い目で見たら、子どもに隠さずにきちんと伝える、そういう姿勢を見せることが良いことだろうと考えたのです。
根拠が確かな情報を集めることが大事
診断を受けた後、まずは病気について理解するためにインターネットでさまざまな情報を調べました。しかし、信頼性が低い情報も散見されたため、公的機関や医療関連団体、患者団体の公式ウェブサイトを中心に根拠が明確に示されている情報を集めるようにしました。特に、国立がん研究センターが提供している「がん情報サービス」 や患者団体、医療関連団体などが提供している情報は、FLの全体像や治療法などを知るのに役立ちました。
ただ、私が一番知りたかったのは「今後どのくらいの期間を過ごせるのか」でした。目安を知れば、その期間でなすべきことの優先順位もつけやすくなると考えたからです。しかしこうした予後に関する情報はインターネット上に見当たらず、また個人差が大きいため主治医もはっきりとは伝えてくれず、もどかしさも感じました。
医療費の不安は
医療ソーシャルワーカーに相談
当時はコロナ禍ということもあって入院中は面会を制限され、退院後もなるべく人と接しない生活を余儀なくされました。その間は妻がプレゼントしてくれた電子端末で好きな映画や音楽を鑑賞して気持ちを紛らわせていました。
幸い、治療は順調に進んで、発症から4か月後には時短勤務かつ内勤で職場復帰し、8か月後には完全寛解になりました。大変嬉しかったですが、治療期間中は医療費の負担や収入の減少もあり、がん保険に加入していなかったことが悔やまれました。また、完全寛解後も3か月ごとに再発予防のための維持療法を2年間受ける必要があり、その都度医療費がかかりました。
治療期間中にがん相談専門の看護師や医療ソーシャルワーカーの方から、「高額療養費制度」や健康保険組合独自の「付加給付制度※」があることを教えていただき、大変助けられました。
※付加給付制度:一部の健康保険組合が独自に行っている医療費の自己負担額を和らげるための制度。高額な医療費を支払った時に、高額療養費制度に上乗せして給付を受けることができます。
詳細はご加入の健康保険組合にご確認ください。
同じ病気の患者さんへ、「あなたは一人じゃない」と伝えたい
FLは進行は遅いものの、根治が難しく再発の可能性もあるため、完全寛解から2年経っても常に不安はあります。しかし、医療は日々進歩していますし、今後も研究や開発は続くと思うので、そこに期待しています。
落ち込んだ時には、たとえ難しく感じられても何かを始めたり、前に進んだりしようとすることが大事だと思います。私はもともと「誰かの命と暮らしを守りたい」という信念があったため、病気をきっかけにこどもホスピスでのボランティアを始めました。また、自分の経験が誰かの役に立てばと、闘病記を書いたり、自分の体験を語ったりする活動なども積極的に行っています。
でも、本当につらいときは、腫瘍精神科など心理的サポートをしてくれる専門家に頼ることもいいと思います。私は早い段階で患者支援の団体に行ったことが、心の支えとなりました。そこには、がん専門看護師や心理士などが在籍し、誰でもオープンに受け入れてくれたため、孤独にならずにすみました。また、患者団体への参加を通じて、落ち込む気持ちを共有できる仲間ができ、気持ちを持ち直すことができました。
同じ病気の患者さんにお伝えしたいことは、「あなたは一人じゃない」ということです。家族はもちろん、医師や看護師ら病院スタッフの方々、そして患者団体の仲間など、あなたのことを気にかけている人たちがたくさんいます。「絶望の淵に立っている」と思ったら、遠慮なく「助けて」と伝えてください。きっと大丈夫。助けてくれる人が必ず出てきます。
2026年1月掲載
JP-VEN-240030-4.0